低い音を担当し、支えている感じが好き

トロンボーン奏者 牧あかりさん

 人の声の音域に近く、美しいコラールも壮大なファンファーレも奏でられるトロンボーン。「中低音でオーケストラを下から支える楽器」と牧あかりさん(26)は落ち着いた口調で話す。スライド管の伸び縮みと息の吐き方で音程が変わる、滑るように音階を出すグリッサンドができる唯一の金管楽器。起源は中世、トランペットの一種から派生している。18世紀には教会音楽で使用され神の楽器とも呼ばれていた。宗教的な場面で効果的に使われることが多い。交響楽に始めて取り入れたのはベートーベン。『第九』では第2楽章で少しと第4楽章でやっと出てくる。「40分近く待つ間はドキドキするけれどもここぞという見せ場で吹ける」と楽しそうに語る。
 市原市で生まれ育ち、3歳から10年間ピアノを習った。「先生が根気よく教えてくださり続けられた」。トロンボーンに出会ったのは地元の八幡中学校に入学してから。吹奏楽部に入り「手足が長いから向いている」と勧められトロンボーンを選んだ。吹いてみると「音が低く大きな音が出て気持ちよかった」。オーケストラの盛んな県立千葉女子高校に入学後、音大受験を決意。少し遅いスタートだったが、部活を続けながら、受験科目のピアノと声楽の教室に通った。 
 初めて習う声楽は「体を使うところがトロンボーンと似ていた」。同時に師事したのは東京に住む元NHK交響楽団首席トロンボーン奏者伊藤清さん。「よく褒めてくれ、音楽の話をたくさん話してくれるおもしろいおじいさん」だった。音楽の勉強に専念した結果「高3のときにはあまり学校へ行けなかった」。無事に合格して大学に入ると上手な同級生が多く圧倒され、学年が上がっても下級生に先を越されることも。大学後半には楽器から離れたくなり、就職活動も試みた。それでも新日本フィルオーケストラの首席奏者箱山芳樹さんが自分の楽屋に呼んで教えてくれるなど周囲は熱心にかかわってくれた。
 卒業後の進路を心配してくれた中学時代の部活顧問から市内の小学校で少人数教育の教師を募集していると聞き、補助教員として勤めることに。芸術鑑賞会を任され、プロで活躍している先輩たちを集めてビッグバンドを組み、若葉小学校体育館でスイングジャズを披露したこともある。『ルパン三世のテーマ』や『インザムード』などを演奏すると子どもたちは体を動かして盛り上り喜んでくれた。
 昨年は千葉市の中学に音楽科の臨時教師として雇われた。男子中学生の気持ちがわからず苦労したが、教え方や褒めるタイミングを先輩教師に聞いて乗り越えたという。吹奏楽部では「技術にこだわらず自分の感情を自然に出し楽しんでほしい」と指導した。中学生の真摯な姿勢に刺激を受け「自分にもこういう時代があった」と再び楽器を持つ気持ちになったそうだ。
 今持っているトロンボーンは「この楽器の方が息をたくさん吹き込めるし、牧さんの良さを生かせるから」とベルリンに留学した友人が譲ってくれた。吹いてみると「温かい音色でしっくりときて、出したい音が出せた」。練習は大変だけれどより良い演奏を追い求めるのは楽しい。スポーツ選手のように体作りのため水泳や筋トレも欠かさない。「アルバイトをしながら、演奏活動をする友人たちが大きな仕事を受けるようになると、自分も演奏者として生きてみたいと思う。一方で学校の教師や音楽教室の講師など安定した職に就きたいとも思う」と将来についてはまだ迷いがある。けれど「ずっと恩師や友人に恵まれてきた」と振り返る。
 クラッシック漬けだった大学卒業後に触れたのはファンクやジャズなどさまざまな分野の音楽。「楽譜に音符がない分、即興で吹くカッコ良さがある」。今年3月、小学校高学年の時の恩師がフェイスブックで市役所のロビーコンサートに出るよう勧めてくれた。秋葉原で組んでいるファンクバンドの実力のあるトランペットとピアノ奏者を誘いトリオを組んで出演する。『A列車でいこう』、『ジュピター』などを演目に入れ、女性3人で楽しく相談しながら練習中。難しいけれどアドリブもいれる。「ぜひ聴いてください」とのこと。
 おっとりとした性格に見えて芯はありそう。「バイオリンは意志が強い、トランペットは華やかでナルシスト、フルートは女性的で清楚と楽器により演奏者の性格が違う。トロンボーン奏者はお酒飲みが多くみんなで盛り上がるタイプ」と笑った。ロビーコンサートは7月23日12時15分から45分まで。

問合せ 市役所ふるさと文化課
TEL 0436・23・9853

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