「『日本オオカミ協会』千葉支部をつくりたい」~日本の生態系がオオカミ復活を必要としている

井上守さん・千代子さん夫妻(大網白里市在住)

 近年、各地で問題となっているシカやイノシシ等による農作物の甚大な被害。同時にシカの急増で、その旺盛な採食から植生が失われ植物に覆われなくなった山の斜面から土砂が流れ出し崩壊したり、土壌生物の減少や渓流が荒れ魚が棲めなくなるなど自然界においても悪影響を及ぼしている。房総も例外ではなく、様々な対策が講じられているが、減る一方のハンターに比べ増え続けるシカに駆除は追いつかないのが現状である。
 そこで、明治時代末に絶滅したとされるオオカミを、トキやコウノトリのように大陸から再導入しようと活動を進めているのが、1993年に設立された『日本オオカミ協会』だ。オオカミ復活によってシカやイノシシの異常な増加を抑え日本の生態系と農林水産業を守ろうというのが活動の趣旨である。
 同会に7年前、入会した大網白里市の井上守さん(61)千代子さん(61)夫妻は、大学時代、農学部で学び、結婚後は山登りを楽しんでいたが、10年ほど前に山岳会に所属していた守さんは、仕事で自衛隊の富士演習場に出向いたところ、地元住民が「シカが増えた」と言う声を聞いた。「自分も山で感じていた」と守さん。同じ頃、教職に就いていた千代子さんも生徒たちと丹沢登山に出かけた時、「学生時代、植物観察で通った山だったけれど、当時とは変わってしまった。竹や笹竹など樹木の下層植物がシカに食べ尽くされ、なくなっていた。生徒たちは、植物のなくなった場所の方が歩きやすいし虫もいなくていいと言う。でも、それは違うと思った。シカ被害がいかにひどい状況なのか、本気で勉強しなくては山が荒れてしまうと危惧した」と話す千代子さん。
 そんな時、目にとまった1冊の本『オオカミを放つ』(白水社)。オオカミ、シカ、イノシシ、サル、生態系、現代のオオカミ観に関しての研究者11人による研究報告と解説、ポーランドとモンゴルでのオオカミの生態と保護管理等を紹介したものだ。「ハンターと共に、オオカミのような強力な頂点捕食者が必要。オオカミを絶滅させたからシカやイノシシが増えた」と知った夫妻は『日本オオカミ協会』に入会。以後、今日に至るまでシカの被害に遭った各地の山を視察したり、都内で開かれる同会の会議に参加。
 同時に、昨春千葉県大網白里市に移り住むまで暮らしていた神奈川県茅ヶ崎市では、日本へのオオカミ導入の必要性を訴えた展示やチラシの配布、アンケート調査を行った。「日本では明治38年に最後のオオカミの捕獲記録が残されているが、オオカミ研究家はいないし、海外へ行き研究する人もいない。会では、海外の野生オオカミ生息地への視察に行き、日本での食害状況について皆さんに訴え行政に陳情もしている。会の設立目的は、オオカミに対する誤解と偏見を解き、その生態を科学的に正しく伝え、世界のオオカミの保護と復活のため。現在、会員は約400人。男女半々で学生、主婦、会社員など職種も様々。みんな、祖先が守ってきた山をこれ以上荒れ放題にしたくないという思いで活動している」と夫妻は語る。
 オオカミに対する偏見のひとつに「オオカミは人を襲うのでは」があるが、同会では「人がオオカミに正しく接していれば襲われることはない。もし襲うのであれば、北米やヨーロッパ、アジアなどオオカミが数多く生息する地域で、多くの人が襲われ社会問題になっているだろう。日本でも1732年に狂犬病が侵入し、感染したオオカミが咬傷事件を起こすまで、各地の神社で神仏に付き従うものとして崇拝されてきた。現在、日本では狂犬病撲滅に成功したので同様の事件は起こらない」と説明している。
 井上夫妻は、「房総も野生動物の被害が大きい。今後は地元での活動にも力を注ぎたい。地元の皆さんとコミュニケーションをとりながら、シカやイノシシなどの害獣と戦っていきたい。まずは、オオカミついて知ってほしい。オオカミは人と共存できる動物。昔、日本人はオオカミと里山で共存していた。自然と人間の関わりについて考え、どうしたらいいのか話し合い、力になってくれる人を増やしたい。ゆくゆくは『日本オオカミ協会』の千葉支部を立ち上げたい。昨夏、会員が熊本県の廃校で展示会を行った。今年、シティライフの元旦号で市原市の廃校となった内田小学校の記事を読んで感動した。で、アート×ミックスの会場となった内田未来楽校を訪ね、是非ここで自分たちも展示会をやりたいと考えた。その願いが叶い、8月3日から市原市で『オオカミミュージアムin房総』を開催することに。是非、お気軽に来てください!」と語った。

問合せ 井上さん
TEL 080・5024・9132

『オオカミミュージアムin房総 オオカミが日本の自然を救う』開催!
8月3日(日)~16日(土)10時~16時30分
内田未来楽校(市原市宿174-8 内田簡易郵便局裏 小湊鉄道上総牛久駅から約2km 旧内田小学校の木造校舎 いちはらアート×ミックスの会場にもなった市原市唯一の現存する木造校舎) 
内容/写真や展示による、オオカミの生態や働き。シカに破壊されている日本各地の自然の現状紹介。オオカミの遠吠えや映像の上映。オオカミ関係の絵本や書籍の閲覧、販売その他。 
主催/一般社団法人日本オオカミ協会
http://www.japan-wolf.org

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