季節のスケッチ

俳画と文 松下佳紀

八月も最後の夕方に散歩していたら、夕映の空に巨大な入道雲が天を突く山のように立っていた。俳句では入道雲を雲の峰とも称するが、周囲の山々より数百倍も高い雲の峰々は夕日に照らされてギラギラと輝き、なお伸び上がろうとしていた▼それは正に大入道、坊主頭の怪物だ。天空に突如出現した圧倒的物量と奇怪な形態は、私に畏怖の念を抱かせると共に、妙に魅惑的でもある。私は散歩を忘れ、しばし見とれていた▼夕日はすでに沈み、周辺は薄暗くなっていたが入道雲はまだ残照をまとい、姿態も崩さず、赤ら顔のまま立っていた。その背後には時折雷光が走り、闇を深めていた。やがて入道雲は跡形もなく暗闇に消え、気の早い星が光りはじめた。

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