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人生の引き出しを使った音作り 『手風琴』
- 2014/9/29
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勝浦市を中心に活動する『手風琴』という名のバンドが、初めて今年5月に自主制作のCDを発表した。手風琴とはアコーディオンの和製名だけに、アコーディオンが中心となり、他にピアノ、ギター、パーカッションが入る。メンバーはトラックの運転手、主婦、塾や自動車整備会社の経営者といった男女混合の4人組。昔からの知り合いだったが、このメンバーで活動するようになったのは、ここ数年のことだという。
「活動のきっかけは、私の弟が主宰する『勝浦アンサンブル同好会』という音楽団体が、東日本大震災の時の支援活動としてチャリティコンサートを開催した時、共に協力してくれたことでした。これまで6回ほどチャリティコンサートを行い、収益金を被災地に送ってきました。何でも気兼ねなく言えるメンバーで、忙しい時間を調整しながら練習を重ね、チャリティ以外でも一緒に活動することが多くなりました。最近になって手風琴らしい音が出来上がってきたので、今の音を残しておきたいとCDの制作を考えました」とリーダーであり、アコーディオン奏者の渡辺ヒロ子さん(53)。渡辺さんは1979年全日本アコーディオンコンテストで総合準優勝した実力者でファンも多い。
以前から手風琴のCDの発表は期待されていたが、制作にはある程度まとまった日数が必要となる。皮肉にも、録音などのオペレーターでもあるパーカッション担当の福嶋直紀さん(48)が足の怪我で会社を一年間休んでいたことがCD制作を可能にしたようだ。「昨年のお盆休みを利用し、ピアノのある私の自宅で録音したのですが、途中でセミが鳴いたり宅配がきて犬が吠えたりと、かなりレアな音がとれました」とピアノ担当の狩野紀子さん(53)は笑う。
CD制作の音録りは、一人ひとりが演奏し、編集して合わせるのが一般的だといわれる。しかしお互いの音を聴きながらバランスよく自分の楽器の音を入れていく方が合っていると考え、全員が同時に演奏し,録音した。製作期間は1週間。そのうち録音は2日のみ。1回でOKとなった曲もあったという。「以前は曲のコピーにしろ、カバーにしろ、原曲に近づきたいという思いでやっていました。それが歳をとって経験値が上がって引き出しが確実に増え、こんなこともできる、あんなこともできると、自分達ならではの曲づくりに変わってきました」とギター担当の新島達也さん。
バンドの一番の特色はアコーディオンが入ることだが、ベース奏者がいないことも挙げられる。ベースが入ると音に深みがでるが、誰かがあえて低音部を奏でることはしない。全体的に音が足りないマイナスを、それぞれの経験値で自然に補うことで、手風琴らしい音楽になっているとメンバーは話す。
最近では大きなイベントのゲストとして呼ばれることも多くなった。大きな舞台に立つことで、メンバーのモチベーションも上がってきた。今回、発表したCDのタイトルは上昇する、舞い上がるといった意味の『ソアリング』。6月にはCD発表記念ライヴを行い、大勢の人が集まる中、CDに収録された曲も含め、たくさんの曲を披露した。音楽仲間の一人が手風琴の風をイメージし描いたジャケットの絵も好評で、温かみのあるCDとなっている。今後もオリジナルも含め、アコーディオンの音が活かせるよう相談しながらの曲作りをしたいとメンバーらは話す。
前述の震災支援のチャリティのスローガンは、来場者延べ人数が一万人に達するまで続けること。50人から100人くらいの規模の演奏会で、これまでに千人の来場者があった。何年かかるか分からないが、スローガン達成までメンバーは共に頑張る意向だという。もちろん今回制作したCDの売り上げの一部も寄付することになっている。販売金額は千円。
問合せ 手風琴
TEL 0470・73・4659