第44回毎日農業記録賞 地元の伝統食『とうぞ』を広めたい

 千葉県鶴舞桜が丘高校3年生渡邉恭匡さんが農業や環境への思いを綴った作品に与えられる第44回毎日農業記録賞高校生部門千葉支局長賞を受賞した。昨年度、地域の環境を守ることについて書いた優良賞に続き、今年度は『次の世代へ守り、伝える 養老川の自然と伝統食とうぞ』をタイトルにした作品での快挙だ。
 「その食感は衝撃的でとても印象的でした」と書いた『とうぞ』は地元市原市や長生地域の伝統食。ミソづくりに使用したダイズのゆで汁に干し大根、煮ダイズや納豆を入れ、各家庭で受け継がれている。渡邉さんの家では「塩、米糀、たくあんのみじん切りを入れ、一晩置いたもの」。味は「ドロッとした独特の食感にほんのり香るダイズのにおい。口の中にしみ出る糀の甘味とコリコリとした食感のたくあんがアクセント」と表現する。
 市内養老地区に住む渡邉さんは、同校の食とみどり科緑地管理コースの実習を生かし、刈り払い機を使って養老川の草刈り作業にボランティアで参加している。作業の合間に年配者に『とうぞ』について聞かれ、答えられず曖昧なまま帰宅。家で母親から春先の食卓に並んでいると知らされ、改めてとうぞが郷土食であることを認識した。
 渡邉さんは、祖母や母親と山に入り、ワラビ、ゼンマイ、ヤマブキなどを採る暮らしのなかで、自然の豊かさとふるさとの文化の大切さを肌で感じている。一方、地元の人たちとの交流のなかで地域の高齢化、人口減少に危機感を持つ。食文化の継承も「このままじゃいけない」との思いがあった。
 そこで注目したのが年間約710万人もの入場者数を誇るゴルフ場。関東一円から訪れるゴルファーにとうぞや山の恵みをPRすることで地元の食文化を広めたいと様々な企画のアイデアを頭に巡らせた。しかし、とうぞは限られた季節しか作れず、希少なので販売するのは難しい。そのようなときに、渡邉家も買い物に行くという岩崎にある赤石味噌糀店で、とうぞを商品化していると知り、同じような考えを持った大人がいることに勇気づけられたという。受賞作は「全国にとうぞブームを起こしたい」、「今私ができることを精いっぱい頑張っていく」と頼もしい論調が続く。「私たち若い世代が大好きな養老川を中心とした自然環境と食文化を守り、次の世代に繋いでいきたい」と意気込みを示した。
 今後は専門学校に進学し、資格を取って地元に就職する。昨年度の受賞記事がシティライフに掲載されたことで、アルバイト先の高滝湖畔にある蕎麦屋でも来店者から声をかけられるなど地元から期待される存在となり、重みも感じている。担当教諭の中田滋己さんは「まじめで、学校のリーダー的存在。3年連続で全国組織のある農業クラブの意見発表会の学校代表に選ばれ、会長も務めた。後輩の面倒見もいい」とべた褒めだった。
 今年度の毎日記録賞の県内受賞は5作品。そのうち3作品を同校の生徒と教諭中田さんが受賞した。

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