社長の夢は浅草演芸ホール出演

 ある時は住宅機器を扱う会社の代表取締役、ある時は自家用機のパイロット、またある時は演芸大会の花形歌手と多様な顔を持つ鬼島義昭さん(73)。三波春夫ならぬ四波秋夫という芸名で男性の着流しから、色っぽい芸者、キュートなミニスカートまで変幻自在の姿で登場し、あちこちの老人福祉施設や地域のイベントで引っ張りだこ。なかでも右半身男性、左半身女性の扮装で器用に男女の声を使い分ける一人デュエットは大人気、文字通り八面六臂の活躍である。
 「えっ、こんなことやるのと驚いてもらうのが楽しみ。みんなを笑わせたいのです」と50代のころ地域の演芸会で始めた。「来年もまた見たいと喜んでもらえば、認知症になったり入院したりする人が出ないでしょ」と高齢者を思いやる。サービス精神旺盛で「ボランティアはできる人ができる時にできることをやるものです」と気負わず自分も楽しんでいる。
 「プロの芸人にお金取れると言われました。でも生業をしっかりやりたい。弟子にしてほしいと言う人もいるが芸は自分の持って生まれた個性でやるものです。ただ、オヤジギャクは周りにうつるんですよね」と笑う。そもそも歌は苦手だった。今から50年以上前、「会社の社員旅行で私だけ歌を歌えなかったのです。悔しくて一宮海岸でアコーディオンを弾いて猛練習をしました」。当時、カラオケはなく、歌は手拍子に合わせて歌っていたそうだ。
 小学生のときは自転車屋、中学生ではパイロットになるのが夢だった。「何か商売がしたいというのは常にありました」。自転車ではなかったが自動車関連会社に入社したサラリーマン時代には、3年間で車の整備、受付、経理、営業の仕事を覚えた。次に家業を継ぐため職業訓練所を経て、タイルやブロック工事の仕事にも就いた。「短期集中型です」
 その後、車の知識も職人の技術も役立て、明治時代から続く老舗の風呂桶屋を繁盛させてきた。「会社の建物を作るとき、右はフロオケ屋、左はカラオケ屋にしようかと思いました」とダジャレまじりの冗談をいいながらも「お客さんにありがとうと言う商売ではなく、お客さんからありがとうと感謝されるよう心掛けて商売をしてきました」と真摯に生きてきた。その間には茂原市に今はゴルフ場となった真名飛行場ができたので、パイロットの資格を取り、自家用機を持った。「あきらめずに一生懸命やれば夢は叶います。若い人にも今やっていることに無駄なことは一つもないと言っています」
 スキー、山登りも現役。パイロットに対する安全飛行講習を日本各地で行い、一昨年、スポーツ航空の普及に貢献したと国際航空連盟から表彰された。現在は茂原市社会福祉協議会会長の要職にも就いている。次なる夢は「浅草演芸ホール出演」だそうだ。

問合せ 鬼島さん
TEL 0475・22・3621

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