【長南町】卓球と共にこれからも人生を歩む 田邉智和さん

 長生郡長南町在住の田邉智和さんは、昨年10月に福井県で開催された第18回全国障害者スポーツ大会『福井しあわせ元気大会』の一般卓球部門に千葉県代表として出場、見事優勝を果たした。「卓球を始めたのは小学校6年生の時、学校のクラブ活動がきっかけでした。小さい頃から身体を動かすことが好きで、中学、高校での部活動、社会人になってからもずっと続けています。得意技は球に回転をかけることです」と笑顔で話す。
 普段は千葉市内のシステム関係の会社で事務職に就き、卓球を練習するのは週2回の土日となる。いくつもの練習会場を回っては、朝早くから夜遅くまで練習するほど卓球への熱意は高い。そんな田邉さんは、左手足の先端に麻痺が残っていることで、右手でラケットと一緒に球をもつ。サーブの際に最低限必要と定められた卓球台から16センチの高さを意識して、右の掌に乗った球を上げ、素早く打つ。その速さは一瞬だ。卓球の技術は確かなものだが、「千葉県代表として全国大会に出場できたことはとても嬉しく、緊張しましたが自信になりました。でも大会のレベルが上がるに伴って、相手選手も段違いに強くなるので、まだまだ練習あるのみです」と、課題を語る。
 田邉さんが事故に遭ったのは9歳の時だった。頭部に重傷を負ったが、偶然にも長南町にドクターヘリが供用されるようになってすぐのこと。「医師の乗ったドクターヘリで治療を受けながら、印西市にある北総病院に搬送されたんです。すぐに手術したものの、一日意識不明。たとえ意識が戻っても植物状態になる可能性を伝えられました」と、回想するのは田邉さんの母、久代さん。幸運にも意識の戻った田邉さんの最初の一言は、参加するのを楽しみにしていたイベントを問う「親子スキーはどうなったの?」というもので、記憶には問題がなかった。しかし頭蓋骨の損傷は激しく、肋骨の一部を移植したものの、今でも頭部の損傷個所には大きな傷が残っている。「千葉市のリハビリセンターに数カ月入って、歩行訓練をしました。子どもだったこともあり比較的短期間で歩けるようになりました。でも頭部の傷は強い衝撃に耐えられないため、事故の直前に入っていた地元の少年野球やサッカーはできなくなりました。そんな中、卓球は危険度も少ない運動」と、いう理由でのスタートだった。
 中学校では卓球部に入り、部活以外に自宅でもテーブルと壁を使って黙々と練習を続けた田邉さん。球の回転量を上げ、打ち方の感覚を自分なりに研究をした。結果、中学1年生で初めて出場した地区大会で優勝を果たした。「高校になると、健常者の中で勝つことが難しくなりました。そして高校2年の時、長南町の社会福祉協議会に登録し、そこから障害者スポーツ大会に出場するようになった」という。現在まで、全国大会に4回出場しており、今回は念願の初優勝。他にも、名古屋や大阪など各地で開催されている大会にも精力的に出場している。

卓球は自分の素材


 今では全国大会で好成績を残している田邉さんだが、一度は卓球を離れようとしたこともある。「高校を卒業した頃です。なんとなく、距離を置きたかった。でも、すぐに気付いたのは、身体が動きづらくなったんです。それまでただ好きでやっていたから分からなかったけれど、卓球は僕にとって欠かせないリハビリになっていました」と、田邉さん。そして、「卓球は自分に良いことも、悪いことも教えてくれる先生のような存在」と続けた。
 久代さんは田邉さんについて、「彼が困難を感じることはサポートを続けていくつもりです。地域性も良かったのか、障がいを持っても学校や友達に恵まれたと思います。一見すると、彼の障がいは分かりづらいので、困った時に周りの人に自分から発信できるようになっていけたら」と話した。

 多くの大会をこなした経験はあるが、まだ試合となると緊張することがある。結果、本来の力の5割程度しか発揮できず、悔しさを感じることも。今はその克服に力を注ぎながら、田邉さんは2020年の東京オリンピック・パラリンピックだけでなく、2024年開催のパリでの大会出場を目指し練習している。大きな舞台への夢は、まだ始まったばかりだ。

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