人生100年時代を元気に過ごす健康長寿の鍵 フレイル予防講演会【市原市】

『フレイル』とは健康と要介護の中間期。加齢で心身の活力が低下した虚弱状態を意味する。フレイル予防事業に取り組む市原市は3月23日、フレイル予防講演会をオンラインで開催、多くの市民が受講した。講師は市原市出身、東京大学高齢社会総合研究機構 機構長で、未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢氏。高齢者の健康に関する多彩な研究分野を持ち、6年前よりフレイルを提唱。国へも政策を提言した専門家だ。同機構と市原市は、学術研究と地域社会の発展を目指すことを目的に協定を締結している。

 

 講演会冒頭、飯島教授が示したのは、今までにかかわった高齢者の写真だった。走るラグビー選手、飲食店のステージに立つギタリストやボーカル、80代となった今も1日も休まず働く旅館の女将など、歳を重ねてなお生き生きと輝くアクティブシニアたち。やがて画像は、杖をついて歩く人、支えられて身を起こす人、ベッドに横たわり介護を受ける人の姿へ。老後のシナリオは千差万別であること、加齢によって健常から要介護状態へと進む過程で、多くの人がフレイル期間を経ること、健康長寿のために生きがいを持つことの大切さが伝えられた。  フレイルは多面的で色々な側面をもち、様々な機能を戻せる可逆性がある。そしてそれは『自分次第』だと飯島教授。長寿に与える要因のうち、25%は遺伝要因であり75%は自分で管理可能な食事、歯科口腔、運動、メンタル、社会性が要因とのこと。一方、行政側の立場からは、既に誰もが知っていることを訴えるのではなく、良質な脅しが必要だという。良質な…とは科学的根拠に基づいたという意味で、たとえば「歩かないと歩けなくなりますよ」ではなく、「筋肉は加齢によって少しずつ失われますが、高齢期に2週間の寝たきり生活をしてしまうと、7年間で失う筋肉をいっぺんに失います」などと、聞く人の胸にストンと落とす内容が必要だと話す。

 

 後半では、親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの筋肉量を確認する簡単なテスト方法も紹介され、実際に参加者が自分の足をテストした。事前に郵送されたフレイルチェックシートには、食事、運動、社会との繋がりなどカテゴリー別に計11の質問があり、各自、赤と青のシールを貼りわけて回答。飯島教授の『答え合わせ』を聞きながらフレイル予防法について学んだ。外出もままならないコロナ禍、サルコペニア(筋肉の衰え)を防ぐには、ふくらはぎのみを鍛えるウォーキングだけでは不十分であること、少しずつゆっくり、転倒に気を付けて階段の昇降など上下運動やスクワットなどの筋トレも取り入れて欲しいなど、ためになるアドバイスの数々も。講話は丁寧でポイントごとに「今から大事なことを言いますよ」と予告されたり、簡潔に2度繰り返されたり、大切な内容がしっかり伝わった。「コロナで地域活動が止まっていますが、電話をかけあったり、協力しあいながら、重苦しい空気を皆で吹き飛ばしましょう」と飯島教授が参加者を激励して講演会は終了した。

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