いちはらの歴史がぎゅっと凝縮!~行ってみよう、市原歴史博物館へ~【市原市】

 昨年11月、市原市能満に市原歴史博物館がオープンした。これは既存の市原市埋蔵文化調査センターを増改築した施設で、愛称は『I’Museum Center (アイミュージアムセンター)』である。館長の鷹野光行さんは、「市原市内には全国でも引けを取らない、素晴らしい歴史遺産がたくさんあります。当館は平成28年より『歴史をつなぐ、人をつなぐ』をテーマに計画が本格化し、今では多くの市民の皆さんがサポーター登録をしています。市原の至宝の展示や体験に力を入れていますので、ぜひご来館ください」と話した。

館内をゆっくり見学

王賜銘鉄剣

 大きな見どころは、常設展示室だ。市原市は旧石器時代から現代へと続く3万5千年という長い歴史を紡いできた。『旧石器、・縄文』『弥生・古墳』『古代・中世』『近世』『近現代』『民俗』のテーマに沿って、各時代の特徴ある資料が並べられている。学芸員の鶴岡英一さんは、「一番の目玉は、市の指定文化財である『王賜銘鉄剣(おうしめいてっけん)』です。これは直径28mほどの稲荷台1号墳から出土した、国産の銘のある鉄剣では最古のものです。今まで佐倉の国立歴史民俗博物館で保管されていたものを、当館のオープンに合わせて引き継いだのですが、大変貴重なものなのでケースにいれる時には緊張で手が震えました」というほど。劣化しやすい銀象嵌のため、ケース内には窒素を充満させて厳重に管理。文字が刻まれている鉄剣は全国でも10例ほどしか出土例がない。『王』以外に表面で読み取れる文字は『賜』『敬』のみ。『王が授けた剣を大切にするように』、という内容が推察されたが、果たして『王』は誰なのかと注目された。古墳から出土した土器は5世紀の中頃であり、鉄剣が製作されたのはそれよりも前の5世紀前半と考えられる。交流のあった中国(宋)が記した歴史書『宋書』が記載しているのは、日本(倭)の五王である讃・珍・済・興・武。このうち、『王』は済(允恭天皇)が有力視されている。暗い展示室で光に照らされて浮かび上がる一本の鉄剣を見ていると、時を忘れるほど魅了されるに違いない。

 また、館内には他の博物館では味わえない独自の見せ方が様々。まず、縄文時代に作られたとされるイノシシ形土製品を含めた数点を3Dプリンターで制作。ケースに入れることなくホールに展示されている。間近で見るだけでなく、手で触れることが可能。「健常者はもちろん、視覚障がい者の方たちにも手で歴史を味わってもらえたら。さらに3次元計測をすることで、新たな発見もあると思います」と、鶴岡さん。間近で見られるものとしては、『埴輪』も見逃せない。全10体の埴輪が触れられそうな距離で並んでいる。中には渡来人の装いを表現したものもあり、その表情までよく見える。「館内全体が二重構造で外気の影響を受けない造りになっているので、収蔵展示ができるんです」と話す鶴岡さんは、「各時代合わせて全部で約1200点を展示しています。多くの並んだ土器を見ながら、時代を経ることで実用的な部分だけでなく模様など機能以外の面白さが加わっていくことなど楽しんでもらえれば」と続けた。他にも、大きなタッチパネルで近世の村の絵図と現代の航空写真を比べることもできる。近世は180以上の村が存在しており、絵図が伝わる地区を選択すれば、過去にはどんな場所だったのか一目瞭然だ。

もっと肌で感じて

館長・鷹野さん

 博物館と同時にオープンしたのが、隣接した建物の歴史体験館。館長の鷹野さんは、「元々は屋内のゲートボール場だった施設を使用しているので、かなり広さがあります。前方後円墳の山倉1号墳を5分の1に、そして西広貝塚の竪穴建物の発掘現場を再現するなどしています」と、笑顔を見せる。発掘現場には、かつて発掘調査で見つかった本物の土器が埋まっているため、発掘する瞬間を味わえる。当館がオープンしてから、市内の小中学校が見学や体験で足繁く訪れている。広い体験館で伸び伸びと学習できると共に、勾玉づくりや貝輪づくりにも取り組める。さらに、手作りの古代衣装を着て、みんなで古墳の前で写真撮影をするなんてことも。

歴史体験館

 また、当館はフィールドミュージアム(屋内の様々な歴史遺産を展示物に見立て、屋根のない博物館として展開)として市内を20地区に分けて順次標柱(フィールドサイン)を設置中。標柱につけられたQRコードを読み込むと、歴史遺産の詳しい情報が見られる。詳細のフィールドマップについてはURLを参照。さぁ、悠久の歴史の物語となる舞台へ!

 

問合せ:市原歴史博物館
市原市能満1489
Tel.0436・41・9344
・開館時間 午前9時~午後5時(最終入館は午後4時半)館長・鷹野さん ・休館日 月曜日(祝日の場合は翌平日)・年末年始
・観覧料 大人個人(団体)300円(200円)
     高校生個人(団体)200円(100円)
https://www.imuseum.jp/

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