創作狂言で千葉をもっと知って楽しんで【千葉市】

 1月8日(土)、千葉市中央区にある青葉の森公園芸術文化ホールにて公益財団法人千葉県文化振興財団主催で「見る、知る、伝える千葉 創作狂言 里見八犬伝 最終章」の舞台が開催された。同取組みは和泉流狂言師の小笠原由祠(ただし)さんと千葉大学、県民によって、房総に伝えられてきた民話や伝承をもとに創作狂言を制作するもので、今回は平成28年度より続いた「里見八犬伝」シリーズの6回目となる最終章。国内外での狂言舞台及びNHK大河ドラマや時代劇ほか、数多くのドラマなどで芸能指導を行う小笠原さんは、「平成17年よりこの企画をプロデュースしています。今年の千葉大学の学生たちはモチベーションも高く、狂言という笑いを表現するセリフへの適応も良かったです。同世代の学生だけでなく、地域を含めて色々な人と関われる授業は非常に貴重な経験だと思います」と話し、演技指導にも熱が込められていた。

今、学べる事とは

和泉流狂言師・小笠原由祠さん

『南総里見八犬伝』を読んだことはあるだろうか。江戸時代後期に曲亭馬琴によって著された同作は、室町時代の房総半島が舞台。呪いによって犬の八房と結婚することになった里見家の伏姫。身ごもった彼女の腹からは、『仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌』と刻まれた8つの玉が出てきて、各地に飛び散ってしまう。数年後、それぞれの玉を持った8人の若者が集結し、悪者たちを倒すという全98巻、106冊のヒーローストーリーで当時大流行した。本舞台は、そんな伝奇ロマン小説を題材とした創作狂言となる。狂言とは日本の伝統芸能の一つで、臆病で見栄や虚栄を張る人間の愚かさなど社会の中にある『笑い』を表現するせりふ劇。本作は、『南総里見八犬伝』に現代風の笑いを含ませながらも、自分の正義のためなら殺人も厭わない八犬士に対して、『〈勧善懲悪〉って何だ』をテーマに別の視点で切り込んだ見どころ満載の作品となっていた。

千葉大学人文科学研究院教授・柴佳世乃さん

 千葉大学人文科学研究院教授の柴佳世乃さんは、「これは大学の座学では経験できないアクティブラーニングの一環です。舞台班・道具班・展示班・広報班に分かれて、異なる学年の学生たちが協力し合うこの授業は、きっと先行きが不透明な社会に出てからも彼らの力になるはずです」と、力強く語った。広報班の1年・日下部朱音さんは、本番中も舞台脇で懸命に撮影に勤しんだ。「私は別の活動で動画の編集経験があったり、カメラを自分で持っていたりしたので広報班になりました。インスタやツイッターで週に1度は活動報告をしています。この経験が未来に生きることはもちろん、今までの公演を30秒にまとめる動画を作ったことで、先輩たちの実績を形にできたことを嬉しく思っています」と、笑顔を見せる。そして、当日ロビーを彩ったのは本舞台内容や活動報告をまとめた展示ポスター。展示班の2年・奈良海咲さんは、「色や文字が大きく印刷するときにどう見えるのか。どういう文章が人に伝わるのかなど考えることは、とても勉強になりました」と、説明してくれた。

 

舞台への強い想い

 舞台は約40分。背筋を伸ばし、息の揃った動きで狂言師・県民とともに舞台班が演じる。舞台班の1年・大田黒澪さんは、「私は高校で演劇をしていたので、伝統芸能かつ地域の方と交流しながら本物の舞台を経験できて嬉しいです。狂言を知らない人にも、もっと興味を持ってもらいたいです」と笑顔。10月に来日したばかりの留学生であるNURUL IMANさんは、「日本文化に興味がありました。日本語が母語ではない私がうまく伝えられるか不安でしたが、周りのみんなに褒められてとても達成感がありました」と、話す。
 また、狂言体験講座参加者として平成17年度より参加を続けている千葉市在住の青木栄子さんも、「山形県出身ですが、様々な作品を通して千葉を知っていくのが楽しいです。練習する過程も楽しく、なにより学生さんたちと出会い、協力することが魅力です」と明るく続けた。舞台運営が色々な人の手で成り立っていることを学び、学生たちは各々の個性で成長できた。そして、来場した約200人もホールに響く高らかな声と舞に魅了されていた。

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