ギターを一から手で作る職人
- 2013/12/20
- 外房版
趣味からの転身!
ギターを一から手で作る職人
ギター制作者 江幡 裕也さん
大網白里市ののどかな田園風景の中にひっそりと佇む家で、江幡裕也さん(45)はギターを作り続けている。江幡さんは大学卒業後、電子回路設計エンジニアとして就職し、中学生時から好きだったギターは趣味として弾いていた。「1996年にアメリカ旅行をした際、ギターの工場見学をした。土産売り場にギターを作れるキットがあり、日本に帰ってきてから半年ほどかけて制作したのがきっかけ」と江幡さん。
会社勤めをしながら2本、3本とギターを制作していくにつれ、徐々に気持ちが変化していった。「ギター制作でやっていきたいという気持ちが強くなり、35歳で退職。翌年には、世界的に有名なErvin Somogyi(アービン ソモジ)氏に弟子入りするため渡米、1年半かけて修行を積んだ」という。弟子入りのための面接は1週間泊まりがけ。口答での試問や木工技術の審査があった。ソモジ氏に弟子入りした日本人は今までに4名しかおらず、江幡さんも面接に辿り着くまである程度の期間を要した。
場所はカリフォルニアのオークランド、「不安は多少あったけれど、やってみたい気持ちが強かった。英語は初めまったく話せなかったので、現地で語学学校にも通った。昼間はギター制作の手伝いをしながら学び、夜は自主制作して分からないところは教えてもらう。最初は見様見真似で苦労したけれど、ソモジ氏が穏和な方だったこともあり辛いということはなかった。すぐに友達もたくさん出来て、旅行に行ったり、週末にパーティをしたりと楽しかった思い出しかない」と話す江幡さんは、その後2005年に帰国、工房を立ち上げて8年が過ぎた。
当初は神奈川県大和市に工房を構えていたが、千葉県野田市に移り、現在の大網白里市に移住してから約5年半が経つ。そして、「現在の活動内容は、お客様から直接オーダーをいただく受注販売や修理関連、制作済みのものをお店に置いてもらう、展示会に出して来場者に見てもらうという3点。扱っているのはアコースティックギターで、クラシック、ドレッドノート、ジャンボ、オーケストラモデルの4種類。基本的にギターの大きさは制作者が決めるもので、表面と裏面はブックマッチといって左右対称。表の面はスプルースという材質でマツ科の常緑針葉樹。40種類以上の樹木の総称がスプルースであるため、ヨーロピアンスプルース、シトカスプルースなど種類によって様々な呼び名がある。また、後ろの面や横は広葉樹を用いるが、そこにもローズウッド、メイプル、マホガニーなど多数の種類。
ギターによって材質を変えること、材質をどこまで削り込んでいくかで音は無限に変化する」と話す江幡さんが、現在までに作ってきたギターは66本。江幡さんのギターはピッグなどを使わず指先と爪を使ってはじき演奏する奏法を用いるように作られているが、「材料の厚み、ギターの中に組み込まれている補強材のパターンによっても音は変わる。楽器なのでどんな音を出すかが鍵であり、私の音は師匠であるソモジ氏のをベースとしている。それでも全体的な形、音、デザインによって個性が出るので、自分だけのどの方向に向かって行くかが重要」と続けた。
工房にある機械は卓上のこぎりであるテーブルソーなどを含めてごくわずか。「ギターを作っている人は便利で早いという理由から機械をたくさん使う人が多いが、自分の手でしっかりと作りたいという想いからほとんど機械は入れていない」という。机の上に置かれた修理中だというギターに触れる手が繊細に動く。じっと見つめる瞳は真剣そのもので、江幡さんが動かす手元の音だけが工房内に響く。壁に並べられたギターは、独特の模様が映えていたり、レトロな可愛さがにじんでいたりと様々だ。受注販売では材質からデザインまで幅広くオーダー出来るそうで、自分だけの1本が作れること間違いなし。
最後に、「工房ではラジオを聞きながら作業することが多い。ほとんど毎日ギターに触れて、疲れたらジムに行って走ったり、海が近いので砂浜を散歩したりする。これからも、ありとあらゆる修理を受けながら、もう少し制作の販売数を延ばしていけたらいいな」と江幡さんは抱負を語った。
問合せ 江幡さん
TEL 0475・71・0867
http://www.ebataguitars.com/index_j.html