震災の残した消えない爪痕 私達は一体何を学んだのだろうか

 今春、東金文化会館で開催された『あれから5年 わたしたちは何を学んだか』に訪れた来場者は約900人以上。第一部ではドキュメンタリー映画『日本と原発 4年後』を上映。監督の河合弘之さんが現地を訪れ、原発の仕組みや歴史、原発事故の発生から現在までを弁護士の視点で描く作品だが、決してニュースでは映らない景色と語られない問題点に2時間18分があっという間に過ぎる。
 主催実行委員長の市川雅子さんは、「天災は避けることが難しいけれど、人災は英知をもって学んでいくことで避けられる災害。原発がもたらした子どもたちへの影響は図り知れません。一方、この映画を通して原発の功罪をしっかり学んで頂きたいです。東北支援の物産は実行委員が現地に足を運んで確かめて提供しています」と話す。
 ロビーに並べられたのは、被災地の商品だ。千葉県旭市のしぐれ揚げをはじめとして、宮城県のわかめや福島県の海苔、岩手県の南部せんべいなど各地域の名産物。中でも目を引いたのは黒毛和牛『飯館牛肉』。福島県飯館村で営んでいた小林牧場は、全村避難区域に指定された。5年前、牧場主の小林将男さんは142頭の牛たちと共に受け入れ先の山武市へと移住してきた。
 「移動開始は6月下旬から8月にかけてでした。牛は暑さに弱いので、ストレスがかかったと思います。月日はあっという間に過ぎましたが、どうして自分たちが被災者にならなければならなかったかという想いは消えませんと」と語る小林さんは、寂しそうな笑顔を商品に向ける。そして「牛の飼育を続けることが畜産農家の願いです。みなさん、山武市に遊びに来てください」と続けた。現在は千葉県民として新たな場所で生きて行くことを懸命に受け入れようとしているが、どれほどの葛藤や悔しさを抱えているのだろうか。
 第二部は合唱団による『歌は生きる力』コンサート。『山武市職員合唱団ザ・ミードルズ』や『東金混声合唱団』、『大里合唱団』ら3団体は『大地讃頌』、そして福島の小高地区の中学生が作った『群青』などを歌いあげた。
 実行委員の折笠文則さんは、「このイベントは3回目になります。1年半かけて準備をしました。報道で見えるのはごく一部。すべてを受け入れるのではなく、様々な情報を見て、考えて、自分の判断や意見を持つことが大切だと思います。この活動を通して、自分と真逆の意見を聞く機会もありますが、それでいいのだと実感するようになりました」と活動を振り返る。
 年齢や立場、場所が異なれば意見も変わることだろう。だが、大切なのは自分の身は自分で守ること。それぞれが、それぞれの場所で過ごした5年間。学んだことに答えを出すのは、いつになるのだろうか。

問合せ 折笠さん
TEL 080-5024-3672

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