桜の思い出を胸に刻み、浸水被害ゼロの地域に ~一宮川河川改修工事~【茂原市】

 一宮川流域では過去30年で4回の浸水被害に見舞われている。中でも令和元年10月の豪雨は未曽有の被害をもたらした。この災害を受けて県は昨年度、一宮川改修事務所を設立。「気候変動による水害の激甚化・頻発化に備え、あらゆる流域関係者が協働して流域全体で水害を軽減させる『流域治水』が必要」として『一宮川水系流域治水プロジェクト』を推進している。今年度は河川整備の一環として、茂原市街地の鶴枝川合流点~豊田川合流点の約4㎞にわたる河川改修工事に着手予定。令和元年豪雨と同規模の降雨でも浸水被害ゼロを目指している。

進む水害対策

令和元年10月、豪雨での洪水

 令和元年豪雨で浸水被害が大きかった要因は、中上流域の3時間雨量が過去最高に達し、この30年に整備された調節池などをしても洪水処理能力が追い付かなかったことである。茂原市街地については支川との合流が多く、流れの勾配が緩やかなことも影響した。地域に降った雨を河川に排水しきれずに内水氾濫も生じた。今夏以降取り組む工事では土手の勾配をきつくし、川の水を流す断面を大きくする。また地盤沈下で低くなった堤防を計画された高さにまで上げる。完成は令和6年度末の予定。併せて市内上茂原ほかで行っている第2調節池の増設も進めていく。
 工事の行われる川の左岸(上流を背に下流を見て右手が右岸、左手が左岸)には約300本の桜の木が植えられているが、工事の支障となる桜が伐採される見込みだ。伐採を惜しむ声もあったものの、右岸は生活道路が土手に隣接しているため、左岸で工事が進められることとなった。一宮川改修事務所の担当者は「できる限り桜の保全に努める方針ですが、市民の命と生活を守ることを最優先に、1日でも早く治水対策を実行していきたい」と説明する。

桜は市民の心にいつまでも

市民に愛された桜並木

 市内八千代の明光橋近辺の桜が植えられたのは昭和51年頃のこと。花の季節には夜間ライトアップもされ多くの人を魅了し、夏には散歩する人々の木陰となっていた。その下流、市立中の島小学校と向かい側の川沿いには、市内大芝の『大芝の河川環境を守る会』によって平成12~16年にかけて約1㎞にわたり100本の桜が植えられた。会員は「苗木から育てたのですごく愛着があります。無事に工事が終わり可能であれば、また桜を咲かせたい」と話す。

返礼品

 茂原市観光協会は、『茂原市の歴史を彩ってきた約200本の桜を記録と記憶に残したい!』とクラウドファンディングを実施。当初の目標を大きく上回り、支援者214人、支援金150万4800円が集まった。「自転車に乗り、毎日桜の下を通って通学していました」「毎年家族や友人と一緒に花見をしていました。見納めと聞いた瞬間涙が止まりません」。支援金に加えて多くの想いのこもった言葉が寄せられ、観光協会ではメッセージと桜の思い出を写真集として冊子にまとめ返礼品に加えた。同協会事務局は「クラウドファンディングで京都や新潟からも問い合わせがあり、多くの人に桜並木の事を知っていただきたいという目標も達成できました」と感慨深げに話す。返礼品は支援金の額に応じて、最後の桜並木をドローンで撮影したDVDや写真、希望の文字を印字したボンボリ、花びらの栞が送られる。

これからに備えて

もばら安全安心メール 携帯

 茂原市は令和元年の浸水地域や県発表の浸水想定区域を踏まえた指定避難所の見直し、『茂原市洪水ハザードマップ』の改定など、避難体制の強化を図っている。ハザードマップは市役所及び公民館や福祉センターなどの窓口で入手可能、茂原市ホームページでも閲覧できる。防災対策課は「災害に備え平時から、自宅にどの程度の被害があると想定されるのか確かめたうえで、指定避難所・避難経路の確認をしてほしい」と呼び掛けている。防災・防犯に関する情報がいち早く受け取れる『もばら安全安心メール』への登録も促進。掲載のQRコードから登録できる。

もばら安全安心メール パソコン・スマホ

防災行政無線については、聞き逃したり聞き取りにくかった場合に放送内容を無料で聴くことができるテレフォンサービスもある。詳しくは防災対策課に問合せを。台風シーズンを前に身の回りの防災対策を一人一人が見直したい。

問合せ:一宮川改修事務所 Tel.0475・26・3703
問合せ:茂原市防災対策課 Tel.0475・36・7580
・茂原市ホームページ http://www.city.mobara.chiba.jp/
●防災行政無線テレフォンサービス
Tel.0120・438・119

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