竹の駅ちょうなん オープン! 竹を地域の資源として生かす ~NPO法人 竹もりの里~【長南町】

『NPO法人 竹もりの里』は、里山保全の観点から放置竹林問題に取り組んできた。今年9月には長南町の旧長南幼稚園跡地に『竹の駅ちょうなん』を開設し、バイオプラスチック製品を手掛ける『株式会社ユニオン産業』と連携して、竹を資源として生かす事業の拠点とした。地域の竹林整備で切り出された竹の買い取りを行い、多方面から関心が寄せられている。

深刻な放置竹林問題

 農作業や日常雑貨など日本人の生活の至る所で愛用されてきた竹だが、時代の流れと共に竹材の消費は減り、タケノコは安価な輸入品に取って代わられるようになった。千葉県の竹林面積は全国7位。所有者の高齢化もあり、整備の行き届かない放置竹林が増加している。
 竹は地下茎を伸ばし雑木林に侵入し、他の植物に必要な陽光を遮り、周囲を竹林化してしまう。根が浅いため土地の保水力は低下し、斜面では地滑りの危険性が高まる。また腐りにくく、河川では水の流れを妨げ、海に流れた竹は船のスクリューや養殖棚に絡まり漁業への被害も引き起こすなど、放置竹林の影響は多岐にわたる。

竹灯り

 『竹もりの里』理事長の鹿嶋與一さんは、「子どもの頃よく遊んだ竹林が荒れている」ことを危惧し、サラリーマンを退職後、2010年9月に同法人を設立した。現在17名の正会員と24名のサポーター会員とともに、様々な活動を進めている。ボランティアも参加する竹林整備は今秋で106回を数えた。昨年よりコロナ禍で自粛したものの、例年は春のタケノコ狩り、夏の流しそうめん、竹細工や竹灯りのワークショップに炭焼き体験など、大人も子どもも楽しめる行事を多く開催。竹炭シンポジウムや環境イベントへの参加も積極的に行っている。また、竹細工作りを中心に活動する『竹もり工芸部』は随時部員募集中だ。毎月第1土曜9時半~15時に、昔ながらのザルやカゴ、新しい物ではバッグやペットボトルホルダー、楽器などを作っている。

間伐竹を商品に

「使われなくなった竹をどう活用したらよいか」という課題に向き合ってきた『竹もりの里』。当初から念頭にあったのは、竹を樹木粉砕機で粉状にした『竹粉』だという。「農業用土壌改良剤として、乳酸菌の働きで野菜の甘みが増し、葉物の育ちが良いと好評です。養鶏用の飼料や生ゴミの消臭などにも利用できます」と、鹿嶋さんは説明する。次に力を入れたのは『ポーラス竹炭』(竹の消し炭)だ。『ポーラス』とは孔(あな)がたくさん開いている多孔質性という意味で、通常の竹炭よりもやわらかく、土壌の微生物を活性化し、吸水性・保水性に富むという特徴がある。窯焼きの竹炭では全行程10日程度要するところ、消し炭は屋外で竹を燃やし5時間程度で出来上がる。価格は通常の炭の5分の1と安価で、1度に大量にできることも商品として魅力がある。「『ポーラス竹炭』も土壌改良剤として大変優れていて、多くの農家の方に利用していただいています。また、都市のオフィス内の緑化スペースでも、重量が軽く、水やりの頻度も少なくて済むことから重宝されています」。『竹粉』『ポーラス竹炭』ともに家庭園芸用にも手軽に使用できる。ホームページからネット販売にて購入可能。

竹の駅でネットワーク作り

 すでに10年以上活動を続けている『竹もりの里』だが、『竹の駅ちょうなん』は、川崎市に本社を置く『株式会社ユニオン産業』との連携を機に共同で開設したものだ。同社はマグカップや弁当箱などの食器類、三角コーナー、植木鉢など、『竹粉』を配合したバイオプラスチック製品を生産している。これらの製品には竹特有の高い抗菌作用があり、焼却処分しても有害物質であるダイオキシンが発生しない。その原料として、長南産の『竹粉』が活用されることとなった。『竹の駅ちょうなん』では、『竹もりの里』が竹を買い取り、粗粉砕したものを『ユニオン産業』に納入。『ユニオン産業』は微粉砕・乾燥・袋詰めの行程を当地で行う予定で、地域の活性化も期待される。
 竹の買取日は月に2回設けられるが、当面は長南町内の竹に限られる。事前登録制で、買い取り価格は軽トラック1台4千円程度。これまで伐採しても行き場のなかった竹を買い取るという画期的なシステムに県内各地から問い合わせが相次いでいる。「困っている人が多いという実感です」と、鹿嶋さん。「竹が資源として循環するネットワークが広がり、『竹の駅』があちこちにできるようになればと思っています。里山の生物多様性を守り、美しい里山を蘇らせることが大きな願いです」と、思いを語った。『竹もりの里』の活動について、詳しくは問合せを。

問合せ:NPO法人竹もりの里
Tel.0475・47・4348
mail:info@takemori.org
HP:http://takemori.org

 

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