ふるさとビジター館
春を告げるチョウ ツマキチョウ
房総の里山で、「春真っ先に飛翔」するツマキチョウ。3月下旬頃から、まだ枯れ草が繁る殺風景な里山を、可憐にヒラヒラと舞う。生き物の息吹がさほど感じられない静寂な雰囲気の中で、「春の使者」と言ったところだろうか。
正確には、春真っ先に飛翔するわけではない。何故なら、ポカポカ陽気になると、キタテハやアカタテハなどのタテハ類やテングチョウなどが舞うからだ。ツマキチョウと異なる点は、彼らは成虫のまま越冬していること。ツマキチョウは蛹(さなぎ)で越冬し、羽化し成虫になる。
他のチョウに先駆け羽化することで、冬の「静」の世界を、「動」の世界に変えていく先導役ともなっている。正に「春真っ先に飛翔」という言葉があてはまるツマキチョウの生態である。
全体的に白っぽく、見た目はモンシロチョウに似るが、一回り小さい。前羽の先端が鮮やかな黄橙色で、それが名前の由来になっている。ただし、それは雄で、雌は先端が灰色である。後羽の裏はウジャウジャとした網目模様になっている。それほど派手ではないものの、白黒の単純なモンシロチョウやスジグロシロチョウより、綺麗であり、出会うと春を感じさせてくれるので心が浮き浮きし嬉しくなる。
成虫は農地、休耕田、公園などの草地や林縁部で5月初旬頃まで見られる。タンポポ類、ムラサキケマンなど春の野草をよく訪れる。タネツケバナやイヌガラシなどのアブラナ科やダイコン、カラシナなどの栽培種に卵を産む。幼虫はそれを食草とし、5月下旬までには蛹となり、そのまま翌年の春まで過ごす。かつては減少傾向だったが、最近では外来植物のショカッサイ(ハナダイコン)の分布拡大で都市部でも見られるという。
ツマキチョウを探しに野外に出よう。そして、春を感じてみよう。
ナチュラリストネット/岡 嘉弘