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有用な嫌われものクズ

 暑いさなか、空地の草刈りが行われていた。刈られた後に通り過ぎると、風の吹き抜ける爽快感がある。風を遮っていたのは、皆から嫌われるクズの大きな葉であった。
 クズは、山野どこにでも生えるつる性の多年草で、行く手を遮るものを容赦なく乗り越え、網の目のように絡み合い、凄まじい勢いで拡がる。垣根や手すりの隙間を埋め尽くし、生け垣を跨ぎ、電信柱や高い植木にも這い上がる。つるから突き出た大きな葉は、すべてを覆い尽くし風さえも遮ってしまう。根本を刈り取っても、覆いかぶさったつるを取り除くのが大がかりなので嫌われる野草だ。
 刈らずに放置すると、やがて葉裏に隠れるかのように花が咲き、甘い蜜の香りが漂う。大きさ2センチぐらいの蝶形花が総状にたくさんつき、下から上へ順に開く。花の色は赤紫。上の大きな旗弁(きべん)の付け根には、昆虫に蜜のありかを教える蜜標(みつひょう)という黄色いマークがある。
 近年の嫌われ野草の一つである一方、古くから親しまれた有用な野草でもある。強靭なつるからは荷縛りの紐や民具、つるの繊維からは葛布(くずふ)という生地、乾燥した根からは葛根湯、根のデンプン質からは葛粉、葉からは家畜飼料など。万葉集には17首も詠まれ、秋の七草のひとつでもある。
 市原でも針金やロープが無かったり高価であった時代は、荷を縛るときの身近な材料であったし、いまでも葛根湯で風邪を治す人も多いと思う。有用であるにもかかわらず、嫌われものとして定着してしまうのはとてもかわいそうだ。
 自然が豊かであれば、そういう野草もあるということだが、いつかまた見直される時が来るまで絶滅しないで残っていてほしいと願う。
ナチュラリストネット/野坂伸一郎

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