房総往来 冬に咲く南国花

山里 吾郎

 昨夏の異常気象の反比例か、今年の1月は厳寒に見舞われた。とりわけ太平洋上に発達する南岸低気圧が猛威を振るい、普段は雪を見ることが珍しい南房一帯で降雪が記録された。そんな1月の半ば、ある目的を持って館山市の南端を訪れた▼気になっていたこと、それは温暖の海岸線を象徴する観光施設「南房パラダイス」。紆余曲折の末、管理してきた県から民間への売却が決まった。若いころ館山勤務の経験があり、何回となく施設を取材してきた身には、ご時勢とはいえ一抹の寂しさを覚えていた▼午前10時過ぎ、フラワーライン沿いの南パラに着くと、予想以上の車が止まっている。連休、冬晴れと好条件に恵まれたせいか―そんな嬉しい憶測は瞬時に消された。大型ワゴンの後ろにウエットスーツの若者。どうやら前面の平砂浦海岸がお目当てのサーファーが駐車場の多くを占領しているようだ▼これもご時勢か―と妙に納得したが、それ以上に気になったのが松林の変色。以前はまさに白砂青松、それが茶色の目立つ林に▼気を取り直し園内へ。なじみの温室棟とマーライオンがお出迎え、シンガポール国立植物園との姉妹提携は27年前だという。冬を忘れるような暑く湿気たっぷりの温室内にはブーゲンビリア、ハイビスカス、バナナなどの熱帯植物・果樹、さらにカラフルなトロピカルバードが飛び交う▼ラマ、ヤギなど動物との触れ合いも楽しく「南パラ捨てたものではないぞ」。民間移管は4月から、もう一工夫すればリピーター獲得は十分可能では…そんな思いを新たに南国の楽園を後にした。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…
  2. 【写真】教室の講師と子どもたち  JR浜野駅前と五井駅前でダンススタジオを経営する堀切徳彦さんは、ダンス仲間にはNALUの…
  3.  市原市不入の市原湖畔美術館にて、企画展『レイクサイドスペシフィック!─夏休みの美術館観察』が7月20日(土)に開幕する。同館は1995年竣…
  4. 【写真】長沼結子さん(中央)と信啓さん(右) 『ちょうなん西小カフェ』は、長生郡長南町の100年以上続いた小学校の廃校をリ…
  5.  沢沿いを歩いていたら、枯れ木にイヌセンボンタケがびっしりと出ていました。傘の大きさは1センチほどの小さなキノコです。イヌと名の付くものは人…
  6. 『道の駅グリーンファーム館山』は、館山市が掲げる地域振興策『食のまちづくり』の拠点施設として今年2月にオープン。温暖な気候と豊かな自然に恵…
  7.  睦沢町在住の風景写真家・清野彰さん写真展『自然の彩り&アートの世界』が、7月16日(火)~31日(水)、つるまい美術館(市原市鶴舞)にて開…
  8.  子育て中の悩みは尽きないものですが、漠然と考えている悩みでも、種類別にしてみると頭の整理ができて、少し楽になるかもしれません。まずは、悩み…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る