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植物が虫を食べるって本当!?実態を探る
- 2014/8/22
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食虫植物子ども教室
7月27日(日)、千葉県山武市・東金市にまたがる国指定天然記念物、成東東金食虫植物群落で『第21回食虫植物子ども教室』が開催され、9名の子どもたちが集まった。主催は成東東金食虫植物群落を守る会で、共催に山武市教育委員会、後援に東金市教育委員会。
『子ども教室』は、守る会のメンバーである山脇成介さんによる授業でスタート。「植物は土から栄養を吸い、光合成をしながら生きている。食虫植物も光合成はするが、土の肥料が少ないために虫を捕えて養分にする。肥料がたくさんあれば食虫植物は滅びてしまうため、守る会では食虫植物を守るため他の植物の管理もしています」と説明。子どもたちが分かりやすいように、イラストを交えたパネルを使ったり、実際に食虫植物が蚊などの昆虫を捕えている様子をテレビ画面に映し出した。
食い入るように説明を聞きながら、食虫植物を覗き込む顔。都内から来た母子は、「朝6時半に出発した。遠かったけれど、子どもが食虫植物に興味を持ったので見せたかった。夏休みの自由研究にしてもらいたい」と話す。成東東金食虫植物群落は、九十九里平野で残されているわずかな湿原の1つ。食虫植物は世界で563種類あるが、日本で見られるのは20種類。そのうち8種類が成東東金植物群落に生息しているという貴重な場所だ。
食虫植物がどういうものなのか学んだあと、教室では実際に種類を見ていく。「食虫植物には、粘り気のある粘液と消化液を分泌して虫を捕える『粘りつけ式』と2片の葉を素早く閉じて昆虫などの獲物を捕える『閉じ込式』、葉の変化した捕虫のうという袋に水と一緒にプランクトンなどを吸い込む『吸い込み式』、密に誘われてくる虫を袋の中に落とし込んで捕える『落とし穴式』がある」と説明するのは、同守る会会長の岩瀬政広さん。子どもたちは、授業が行われる管理棟内で生育されている『ハエトリソウ』に楊枝を近づけて実際に葉を閉じさせてみる。
山脇さんは、「落とし穴式の『ウツボカヅラ』の中には、人間の胃液と同じように液体が入っている。以前ネズミが飲まれたこともあるんだよ」と話し、岩瀬さんも「今は中に何が入っているかな」と部屋のウツボカヅラを採取。テーブルの真ん中に置いたケースに、中身を開けた。大きな獲物はなかったが、中からこぼれる液体を見て四方から歓声が上がる。その他、クイズ形式でさらに食虫植物への理解を高めたあと、全員で湿原に散策へ出る。
『コモウセンゴケ』や『ナガバノイシモチソウ』などが生い茂る湿地は、日常生活で見ることのできない植物がいっぱいだ。虫めがねを手に、守る会メンバーの解説に耳を傾ける。「オニユリの花粉は服に付くと洗濯しても取れないから気をつけて」、「ナガバノイシモチソウが見えますか。先をくるっと丸めている中に虫がいます」という案内で注意をしながらも目を凝らす。
朝から猛暑日となったこの日だが、水分補給をしながら次は採集に出る。遊歩道に生える植物の中から、5つを選んで標本にする。採集する際には、保存植物もあるため守る会メンバーに必ず確認をする。「これは何?」「それはオオバコ!」と質問が繰り返される。教科書の中だけでは分からない、自然に触れる機会に好奇心も旺盛になる。
「今回はメモ標本と言って、簡単に出来るものを作ります。採集した植物を、紙の上に3カ所位にテープで止める。カードには植物の名前、採集日、取った場所、そして教えてもらったことや気付いたことを書きましょう」と丁寧に指導するのは守る会の土屋みさおさん。「ヨモギは何科?」、「取ってきたときには花が開いていたのに閉じちゃった」などと子どもたち。
船橋市から特別参加した幼稚園年中児は、兄たちに手伝ってもらって大奮闘。「標本は、場所を変えながら乾燥させて10日くらいで出来上がり。もっと早く作りたいときは、漫画本に挟んだ状態で両脇を板で挟む。強めのゴムで本を巻いて、車の中に放置すれば今の季節なら数日でできる」と岩瀬さんが豆知識も伝授。理科の教師を勤める父親は小2の息子の姿を見て、「とてもいい勉強になったのでは」と満足そうだった。