富士信仰の遺跡を訪ねて

 『市原市ふるさと文化研究会』事務局長の青柳至彦さんが、ユーモアのある講義を展開する『五井の街再発見』が9月10日に五井公民館で行われた。実際に五井の町を歩き、神社や寺、石仏などに残る地元の歴史について学ぶ3回シリーズの人気講座だ。
 第1回目は富士講の遺跡訪問として、君塚にある稲荷神社と明光院(真言宗)を訪れた。富士講は江戸時代後期に盛んであった、富士山を崇め奉る民衆信仰で、火難や病難払い、安産を祈願することが多かった。当時、稲荷神社の氏子と明光院の檀家は共に富士講の一派である山包講を厚く信仰しており、境内の碑にその遺跡を見ることができる。同神社の富士塚の前で、白い宝冠を被り、行衣に身を包んだ同研究会のメンバーが五鈷鈴を手に拝みを披露した。富士山に登拝した人は行人となり、行衣の背に印がつけられる。「富士講は村人たちが月に一度、自分たちで拝み、自分たちで苦難を解決する組織でした。先達は村の世話役であり、悩みを聞き人助けをすることで周囲からの信頼を得ていたのです」と青柳さん。
 富士講は国家神道の道を歩んだ明治時代以降、廃れていき現在はほぼ途絶えてしまっている。これらを復元、保存しようと同会のメンバーは今年の春から毎月、教典「お伝え」を唱える拝みを始めた。
 その他、明光院には馬頭観音や子安観音、江戸時代に四国八十八カ所を市原市内の寺に移した当時の住職、開演の碑などがあり、様々な信仰が存在していたことを示している。「庶民の歴史はほとんど書物に残されていません。自分たちの手で探っていかなければ」と青柳さんは研究を続ける。
 30名の参加者は他県出身者も多く「地元ではないので知らない道や歴史がたくさんある。面白いです」との声が聞かれた。

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