東日本大震災から6年が経過 カメラを通して何が伝えられるのか

写真家 山崎 芳郎さん

 東金市在住の山崎芳郎さん(67)は東日本大震災で被災した地を訪れ、写真に撮り続けている写真家だ。今年1月に東金サンピアアートギャラリーで開催した写真展の来場者達は福島の現状を目の当たりにして、「町の中に人がいないなんて不気味な感じ」、「福島の出身なので懐かしい部分もありますが、リアルな写真で見ていられないです」など様々な声を漏らした。
 長年、幼稚園や小中学校の卒業アルバム制作を手掛けるなど、千葉市緑区で写真店を営んでいた山崎さん。2011年3月に東日本大震災が発生すると、同年8月に気仙沼市を訪れた。「まるで原爆が落ちたかのような有様でした」と思い出す山崎さんは、翌年には、南三陸町でボランティアにも参加。そして2013年には、福島第一原子力発電所のすぐ側まで足を運び、人の暮らせない町を見て衝撃を受けたという。
 写真にうつされた大熊町、双葉町、浪江町など放射線量が異常に高いレベルの帰還困難区域。南相馬市の海辺から押し流された軽トラックは草原で朽ち果て、道路は波打ち、崩れ落ちた家々。人の姿はなく、家の中は物が散乱。その中で桜や軒先の花々は、地震などなかったかのように美しく咲き誇っている。震災後、30回ほど現地まで足を運んでおり、様々な風景を写真に収めてきた。だが、現実を目の当たりにすればするほど付きつけられたのは景色よりも、『知識不足』という焦燥感だった。「どうして原発が福島にできたのか。放射能とは何なのか。除染や補償の問題など、関連する書籍が目に留まれば読み漁りました。福島を理解するには知識を増やし、歴史を知る必要があるんです」
 そんな山崎さんが撮影し続けている女性がいる。田村市在住の遠藤冨美さん(75)だ。2014年3月の朝日新聞に掲載された記事を読んだことがきっかけで、翌月福島へ写真を撮影しに行った足で冨美さんの元を訪れた。大熊町で原発作業員のための下宿屋や居酒屋を経営していた彼女は、両親の残した田村市の山林へ移り住み、そこで再び花園を作ろうと生きている。
 「直接、写真を撮らせて下さいとお願いしました。大熊町に持っている別荘に連れて行ってもらったり、冨美さんの90歳になるお母さんにお会いしたり、可愛い犬や猿のペット達も写真に収めてあります」と話す山崎さんは、カメラのファインダーを通して撮り続けるうちに、冨美さんの苦悩が見える瞬間もあるという。自宅のある東金市から福島県田村市近隣まで片道4時間かけて車で移動している。ほとんど日帰りで撮影をするが、まれにお酒を飲み交わす時がある。そんな時でさえ彼女は愚痴をこぼさない。彼岸花の球根を植え、花が咲くと連絡をくれる。大木を清々しい表情で見上げ、花畑の中で優しい笑顔を見せる。
 「こんなにじっくりと人の顔を見たのは、初めてかもしれないと思いました。写真展を開催したり写真集を作ると、人はこの写真が素敵ねと言いますよね。でも、私は1つの瞬間として見て欲しいのではないんです。福島の景色も人物も、1つの流れとした全体的な視点でとらえて欲しいのです」と語る山崎さん。確かに、1つずつ切り取って眺めるとそれぞれに大きな衝撃も走るかもしれない。だが、時間は必ず流れ、歴史に何があろうと止まることはない。
 そして、「いつも1枚撮れればいいという気持ちで福島に行くんです。でも、千葉に戻ってからもっと撮っておけばよかったと感じるようでは遅い。次回訪れた時には被写体が変わっていることなどしょっちゅうです。10年撮り続けて、そこでやっとまとめられるかなと考えています」と続けた。
 福島で生きる人々のドキュメンタリーを撮りたいと願う心は、決して問題提起をしたいのではない。理解したいのだ。「原発の悪口を外野は言わないで」、「我慢して夢のない人生は嫌」と強気な口調をにおわす時もあれば、「夢があるような顔にとって」、「鳥の声が美しい」と可愛らしさを見せることもある冨美さん。山崎さんのカメラは一瞬を逃さない。福島の地で生きる彼女は、自身がどれほど凛とした顔で空を見上げているのか、気づいているのだろうか。

問合せ 山崎さん
TEL 080・5020・6479

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