雑木林のヤマツツジ
 
 雑木林にヤマツツジの朱色の花が見られる季節になってきた。木々がまばらな所や外に張り出した枝の花は遠くからでもよく目立つ。木陰の奥をよく見ると、まだ人目に付かぬたくさんの花が覗ける。周りの木々に埋もれた中にも朱色が鮮やかだ。通り過ぎる車や離れた所から見える株の10倍を超える数がありそうだ。花の重みで細い枝が崖から垂れ下がる姿は、盆栽の懸崖作りを凌駕する。
 ツツジ科ツツジ属の半常緑低木ヤマツツジの樹高は1~3メートル。春に生える春葉の長さは3~5センチ、先がとがる楕円形、秋に落葉する。夏から秋に生える夏葉の長さは1~2センチ、先が丸いさじ形、その多くは越冬する。細い枝の先に大きさ5センチぐらいで漏斗形の花が2~3個付く。
 この時季、春に目覚めた生き物たちの繁殖が盛んになる。虫たちは、花の蜜や草木の樹液を求めてブンブン飛び交う。雑木林に集まるたくさんの種類の虫は、蜜や樹液を供給する植物に恵まれている。ヤマツツジのほかにも白や青や赤い花が、その存在を主張しあって咲き誇る。
 植生の多様性がそこに集まる虫たちの多様性に結びつき、虫を餌にする野鳥や小動物の多様性につながる。たくさんの生き物たちの糞や死骸が微生物に分解され、雑木林の肥料になる。雑木林が多い市原では生物多様性の生態系が活発になる季節でもある。
 ヤマツツジの花から地域の生態系がイメージできる。雑木林に恵まれる市原の自然が豊かな訳だ。
ナチュラリストネット/野坂伸一郎

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