二世帯住宅?

遠山あき

 初夏、月崎駅は「ツバメの駅」になる。いくつもの巣があり、待合室はツバメが占領してしまう。二年前だったか、ツバメの群れが珍しく争っているのにぶつかった。いつもは大人しいツバメが、激しく争っているのに驚いた。どうやら彼らは巣作りでもめているらしい。
 巣立ったツバメは冬が来ると暖かい国へ渡っていく。数千キロもの遠い国へ長い旅をして。そして日本が初夏になると、また戻ってくるのだ。不思議なことに彼らは必ず自分の生まれ育った巣のところへ帰るという。だから昔の農家では「また去年のツバメが帰ってくるから」と古巣を大切に残しておいたものだ。
 してみると、このツバメたちはこの駅で生まれたのだろう。そうか、分かった!元の巣へ帰ってきたら、去年巣作りをした親も帰ってきていて、どっちも自分の古巣なものだから、お互いに所有権を主張しているのだ。すでに親は古巣の修繕を始めていた。壊れた場所へせっせと泥を運んで整えていた。成鳥した子ツバメも負けてはいられない。自分の育った家なのに!と争っている。
 そこへ列車が来て、私はツバメに心を残して乗り込んだ。帰りのときに、急いで列車を降りツバメの巣を見上げた。なんと!彼らは古巣の隣にくっつけて、巣作りを始めているではないか。雌と雄と仲良くせっせと泥を運んでいる。「まあ、二世帯住宅ね! 頑張って、仲良くね!」
 十日ほどたって、また駅へ行った。彼らのその後がしきりに心にかかっていた。あらー!見ると新しい巣、おそらく子ツバメが作った巣は廃屋になっていた。話合いはうまくいかなかったらしい。彼らはどこかに新しい巣を作ることにしたのだろう。ツバメの二世帯住宅に微笑ましい期待をかけていたのに、残念……。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1.  コロナ禍で中止していた観音寺(鴨川市)の『ひなまつり』が3年ぶりに開催される。慶応元年(1865年)、現在の鴨川市に生まれ日本のためにと自…
  2. 【写真】(前列左から)会長・後藤さん、講師・片岡さん、     (後列左から)会員の常盤さん、後藤さん、市原さん、中村さん …
  3. 【写真】工房の庭にて。小原さん(左)、齊藤さん  睦沢町下之郷に2人の陶芸家が住んでいる。『夢楽工房』を共同で主宰する齊藤…
  4.  寒い冬の真っ只中、皆さんはどうお過ごしでしょうか?家にこもりがちで、外に出ない方も多いかもしれません。こんな時こそ、ウインタースポーツとし…
  5.  秋晴れのなかの11月6日、茂原公園の広場をスタートに『第19回千葉県ウォークラリー大会茂原会場』が開催された。毎年開かれているこの大会も、…
  6.  ツグミという野鳥をご存じの方も多いだろう。体長23~25㎝、白い眉斑で、頭から背面は黒褐色。羽が茶褐色で、胸から腹にかけてはうろこ状の黒い…
  7.  小湊鐵道光風台駅から、西方に歩いて15分程にある鶴峯八幡宮。鎌倉時代・建治3年(1277)に本宮大分県の宇佐八幡宮より御分霊を戴き、お祀り…
  8.  昨年も、『こでまりの夢』をお読みいただきありがとうございました。昨年は17年間のコラムをまとめ、出版することが出来ました。これもひとえに、…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1.  コロナ禍で中止していた観音寺(鴨川市)の『ひなまつり』が3年ぶりに開催される。慶応元年(1865年)、現在の鴨川市に生まれ日本のためにと自…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る