茂原市が誇る工場へ

 10月16日、茂原市商工観光課主催で『市内工場見学会』が行われた。市バス『モバりん号』に乗り、25人の参加者が最初に向かったのは沢井製薬⑭関東工場。虫の侵入を防ぐ2重の自動ドアから建物に入り、会議室で映像を見ながら工場の概要や製造工程について聞いた。
 大阪に本社のある同社が茂原市で新工場を稼働させたのは2013年から。従業員260人のうち9割が茂原、長生地区に住んでいるという。製造するのは生活習慣病に関わる薬、抗アレルギー薬、抗がん剤などの錠剤、カプセル、注射剤になったジェネリック医薬品。新薬(先発医薬品)の特許期間が過ぎたあと、同じ有効成分を使って製造販売する後発医薬品のことで「厳しい基準をクリアした薬で効き目や安全性は同じ。研究の時間と費用が抑えられるので安く提供できる」とのこと。さらに形や味、錠剤に薬名を大きく印字するなど飲む人のことを考えた改良も加えている。
 見学は靴をシューズカバーで覆い、エアーシャワーを浴びて工場内に入る。見学通路からガラス越しに、原料である主薬などを加工して顆粒にする、その顆粒に圧力をかけ錠剤形にする、検査する、包装するなどの工程を見た。中間製品の出し入れはフロービン(容器)と水平垂直に移動できるスタッカークレーンを使用する。専用の作業服姿に身を包んだ人をみかけると「人がいる」と参加者が口にするほど機械化されていた。ようやく数人の社員の姿を見ることができたのは試験室や包装室でのこと。人と製品は分離され、作業員は空気圧を高くしたアルミパネル使用のクリーン廊下を通って移動するそうだ。
 午後から見学したのは従業員36人の日本ロストワックス(株)。ロストワックス製法とは簡単に言うと、ろう(ワックス)で作った原型を鋳砂で覆い鋳型を作り、蝋を溶かして抜いたあと、鋳型に金属を注入し機械部品を製造する方法。炭素鋼、特殊鋼などさまざまな金属が使用でき、複雑で精度の高い形状が作れるので、航空機、スポーツカー、自転車、農業や精密機械など多方面の部品に利用される。各工程は全て手作業。ろう型を作るところからはじまり、溶かした金属を鋳型に流し込む、鋳型から出した製品をさらに均一で精巧な部品になるように削る、磨くなどの工程までひとつひとつ作業員が行う。溶鉱炉が発する熱を受けながら参加者の一人は「日本の機械工業の基礎となる工場。日本人の勤勉さや真面目さが凝縮されている」と職人の技術に感心していた。
 「高度に機械化された近代的な企業と、手作業でなければできない技術を磨き続ける企業、対照的な2社を訪問し、地域の工業について知ってもらえた」と話したのは同行した市担当者。最後に旬の地元野菜や苗を売る農産物販売所『ねぎぼうず』に寄って帰着した。

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