房総往来

初夏を彩る紅花
山里 吾郎

 アヤメ、アジサイ、花菖蒲…。梅雨の時期を彩る花は意外に多い。さしずめ「雨に咲く花」か。そんな中に加えて欲しい季節花をもうひとつ見つけた。ベニバナ(紅花)。こちらは梅雨というよりも「初夏の花」と言った方がぴったりかもしれない▼白いつぼみから黄色の花が顔を出し、やがてオレンジから赤みを加え紅色に。満開になるといかにも菊科の花らしい可憐なたたずまいを見せる。原産はエジプト地中海沿岸、シルクロードを経て渡来したというからいかにもロマン漂う花だ▼紅花と言えば山形県の特産として知られるが、どうやら日本のルーツは房総の中央に位置する長南町で間違いなさそうだ。そんな解明も含め6月上旬、市原と国道409号でつながる同町の長福寿寺を訪ねた▼縁起によれば798年、桓武天皇の勅願により創建された天台宗の古刹で「学問の守護神」として知られる。文献などを重ね合わせると学問との結びつきだろう、菅原道真の子孫が同地に住み着き長南次郎と名乗った。その一族が紅花を栽培、特産品として時の朝廷に納めたのが「長南紅花」の由来という▼室町に入り武田一族に占領され散り散りとなった長南氏の一部が山形に移り住む。もともと染料をはじめ餅などの着色、化粧用の紅などに珍重された紅花はやがて山形の特産品となった▼こうした紀元を紐解きながら「長南を再び紅花の里」にしたいと同寺の今井住職が約20年前、わずかな種子を境内に栽培、今では約7万本の花が季節を彩るまでになった。訪ねた頃はまだ咲き始めだった紅花、6月下旬になった今もドライフラワーとなって我が家を飾っている。

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