ふるさとの歴史に興味をもって 梵天供養の一日

 3月12日(日)、市原市勝間にある神照寺に集った行人約30人が梵天供養を行った。市内では八幡や五井、姉ケ崎など広範囲に渡って、出羽三山信仰の強く根付いた歴史がある。山形県にある月山・湯殿山・羽黒山と山岳信仰の対象とされた山々は、平安末期頃には修験山伏の道場として発展していったとされている。
 郷土史研究活動をする佐野彪さんは、「出羽三山には信者が登拝する前日に宿坊に宿泊するのが習わしでした。かつては300戸あった坊も今では約30までに減少しています。勝間の行人たちと関係の深い正伝坊に残る『上総国檀那祈祷帳』によれば江戸時代元禄16年に出羽三山に参拝した記録があります」と貴重な話をする。勝間でも戦前までは、行屋となる神照寺に参籠し身体を清めてから三山登拝に旅立ったという。
 出羽三山に参拝する目的としては家内安全や健康、五穀豊穣の祈願などが主だった。旅の道中、また宿坊での酒盛りなど他の楽しみもあったかもしれない。しかしそれ以外にも、お山参りをすることにより新しく生まれ変わるという疑死回生の宗教的な面もあったという。
 この日、梵天供養に訪れた正伝坊の吉住光斉さんは、「死んだくらいの苦労をして生まれ変わるのが三山参りです。行人は村へ帰ると人型を作り、死んだ自分として供養塚に祀っていました。最近は、女性の方も多く訪れていますので、修業という大業な意味でなくともぜひ宿坊へいらしてください」と語った。
 行人会は約1時間半をかけ、竹や半紙を使用して3本の梵天を制作した。刀や人型を模した梵天は毎年3月に作られ、地元の供養塚に献納されている。また、今年は若者の参加が年々減少していることを危惧し、伝統を絶やさないためにも梵天の制作方法をビデオに収める対策をとった。
 「私達は大事な宗教文化を守っていく必要があります。実際、勝間の村でも10年ほど梵天供養が行われない時期がありました。長い時間に紆余曲折はあります。それでも314年先祖が足を運んでいた歴史を後世につないでいきたいです」と行人会会長の茂手木洋さんは声を高める。
 吉住さんのもと、神照寺で三山神社拝詞に耳を澄ませた行人達は、その後1㎞ほど離れた供養塚に行き献納の儀を行い、献杯。「すごい。三山頭拝記念碑の後ろにすべての参拝した人の名前が刻まれているんですね」と感嘆の声も。「若い人は初め興味がなくても、任せてみると主体的に動いてくれます。頭で行をしたつもりでは理解できません。とりあえず、若者を出羽三山へ送り出す背中を押してあげてください」と吉住さんは呼び掛けていた。またひとつ、地域の絆が深まる日になったのではないだろうか。

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