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幻想的なアクセサリーからゴージャスなバッグまで多様な「革」から生み出す芸術の数々
- 2017/6/9
- 市原版, シティライフ掲載記事
レザークラフト作家 花房 順子さん
玄関ドアを開けると、宝箱に入ったかのような光景が広がる。石や貝を散りばめて輝く指輪やブローチ、裸婦をイメージしたオブジェ風の鏡、光を幻想的に広げる前衛的デザインのランプシェード等々…。それらがすべて「革」をベースに作られていると聞き、再び驚かされる。
市原市国分寺台にある花房順子さん(65)のアトリエ兼自宅。建築業に携わるご主人により設計された玄関アプローチには、花房さんのレザークラフト作品が美術館さながらに並ぶ。「レザークラフト」というと、一般的に、アメリカンカービングをはじめとした牛皮製のハードなものをイメージしがち。
ところが、花房さんの作品は女性の目を惹く繊細で華やかなものが数多い。そしてそれは、牛皮のみならず、羊皮、豚の生皮など作品に応じて異なるレザーを採用することで生み出されている。
「『皮びいどろ』と呼ばれるように、なめす前の豚皮は透明で、太陽光に映え美しく輝きます。目には見えない細かい毛穴から光が入って、パーッと優しい光を作り出すんですよ」
固い生皮を温めふやかすことで造形し、そこに色をつけたり、装飾用パーツを加える。1枚の皮に切り込みを入れて立体的な花やトンボなどに仕上げていく様は、まさに『生皮工芸』。着色することで金・銀・銅製品、あるいは陶器製かと見紛う外見となるが、「皮だから落としても割れることはないし、とにかく軽い。例えば、ブローチなら薄いブラウスにつけても垂れ下がらず、イヤリングなら大きなものでも耳が痛くならない」
もちろん、レザークラフトの代名詞・牛皮の作品もバラエティ豊か。小物から眼鏡ケース、財布、バッグetc。「牛皮は使えば使うほど人間の手の脂で艶が出る。使っていくうちに、着色したものは色が薄くなりますが、塗り直すことで再生可能。色をつけなくても、白から飴色になって独特の風合いが出てくる。それが牛皮の大きな魅力です」
大阪出身。21歳で結婚し千葉へ。3人の子どもに恵まれ、育児の合間にカルチャーセンターでレザークラフトを学び始めたのは40年前、25歳の時。「フィーリングがマッチした」というレザークラフトで資格(日本工芸協会皮工芸講師)を取得し、より技術を磨こうと都内のスクールにも通った。この間、「結婚前から好きだった」油絵も本格的に学び、自らの皮作品にそれを反映させている。「色付けって楽しい。皮を無機質に見せたり、逆に温かみを出したりできるから」
ちなみに、油絵では50号などの対策にも挑み、県や市の絵画展に出品(うち数点は入選)。更に、ここ10年は裸婦をテーマにデザインされたものが少なくない。「私の付けている指輪を見て、表参道や白金のオシャレな女性たちが驚いて『どこで買えるんですか』と聞かれるので、こっちが驚いてしまいます」と笑う花房さん。「命をいただいた皮に息を吹きかけ、作品によみがえらせることがレザークラフト作家の使命。『静と動』、『繊細と大胆』を基軸に、精魂込め、愛情を持ってべっぴんさん(別品さん)をこれからも作り上げていきます」
従来のレザークラフト教室(牛皮)の他、今春から 毎週金曜日午後 第2・第4金曜の10時~17時は自宅(街の小さな美術館)を解放し、レザークラフト作品や絵画に囲まれたティータイムを提供するという。尚、展示作品にはアクセサリーや財布等の小物を中心に販売品もあり。
問合せ アトリエ花房
TEL 080・1181・8656