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行脚(あんぎゃ)の果ては熱狂か
- 2017/6/30
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アート×ミックス会期中の4月14日から10日間、東京湾河口から水源まで養老川流域を門付け行脚『ちょぼくれ』で巡った舞踏団『トンデ空静(からしずか)』。道中で出会った人間や土地の気を孕み、芸術祭会場『月出工舎』に辿り着き、28日から30日まで野外舞踏公演『ばけのかわ』を興行した。
主宰の松原東洋さんが「再生が主題。しかし、その後の方向はわからない」と話す舞台は、市原の大地と共鳴して完結する。最終日、全国から訪れた老若男女は約400人。斜面を削り作った仮設席はぎっしり、後ろの小高い木立の間を陣取る人もいた。
前回の芸術祭開催直前に倒れ、芸術監督の岩間賢さんの作品として蘇った巨木と森が今回の舞台。唄と楽器の生演奏に加わるのは、木々を渡る風や小鳥のさえずり。里山のもののけや人間どもに扮した白塗り、着ぐるみの踊り手が森の奥から湧き出て、お茶らけた空騒ぎと詩的な静の舞踏を交互に繰り返す。
タヌキ顔の和太鼓集団『切腹ピストルズ』も破壊的パワーで乱入。見下ろす位置にあるプールや校庭、校舎の屋上も縦横無尽に使う長谷川宝子さんの演出に観る人は、月出を包む、あやかし、まやかしの世界に魅了された。
観客たちは熱狂的ともいえる反応で、入場料替わりのおひねりを次々に投じていた。