海山幸に囲まれた千種

 市原市の千種地区は、かつて豊かな海と養老川の育むと豊穣な大地との接点に位置し、半農半漁が生業だった。明治期には塩田もあり、内陸部は江戸期から果樹栽培がされていた。ところが、昭和30年代の京葉臨海工業地域形成に伴う埋め立て事業と急速な市街化により、生活は大きく変化した。
 7月29日、千種コミュニティセンター主催『千種の歴史講演会』が『鎌倉街道を歩く会』により開かれ、60人近くが参加した。前半、『千種地区の自然史』を講義したのは大学で地理学を教える小関勇次さん。
 昭和36年の空中写真では、白塚、柏原、島野、飯沼、野毛、廿五里は少し高くなった堆積微高地に集落があり、囲むようにある水田や畑が昔の河床や氾濫原だったとわかる。参加者とともに現在地、旧海岸線などを確認し、明治期の迅速図、地理院地形図と重ね、中世の養老川の流路を描くと小関さんは「青柳の前川が河口で島野には古代道の駅家がありました。国府に通じる重要な港だったのでは」と推測する。明治から昭和、埋め立て後の暮らしも振り返り、未来に向け、「一緒に故郷を創りませんか」と結んだ。
 後半、『千種地区における石造物の類型及びその特徴』を講義した県立生浜高校教諭の鎗田誠さんは「石造物は郷土を知る大切な史料。身近な墓石からも、江戸時代に海岸の所有権を争った松ヶ島対青柳の因縁が浮かびます」とその魅力を楽しく話した。
 また、松ヶ島の旧家永井家が所有する、納税、徴兵、相撲興行などの貴重な書類も展示され、日章旗の寄せ書きに祖父の名を見つけ、驚く77歳の参加者もいた。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】お店の前で。『十五や』のTシャツを着た藤本さん(後列中央)と田頭さん(右隣)  緑豊かな市原市東国吉で、県道21号…
  2. 【写真】本祭の武者行列で本田忠勝に扮する渡辺正行さん  第50回大多喜お城まつりが10/12(土)・10/13(日)の2日…
  3.  市原市では、現在「文化交流施設整備基本構想」の検討が進められており、この構想について市民の皆さんと一緒に考える「文化交流施設シンポジウム」…
  4.  親子で楽しめる『マミーズマルシェ・ハロウィンパーティー』が10月14日(祝)、夢ホールで開催される。主催は『マミーズハンドメイド』、子育て…
  5.  市原市、君津市、大多喜町が連携したスタンプラリーが8月26日(月)から12月15日(日)まで開催中です。久留里線、小湊鉄道、いすみ鉄道のロ…
  6.  マザー牧場では、9月1日(土)から11月30日(土)までの3カ月間、芸術の秋を楽しむイベント『第23回秋のこども写生大会』を開催中です。 …
  7.  先日、実家の父が他界しました。厳格な昭和の父から厳しく育てられた私は、中学生の頃、家を飛び出したこともありました。そんな父のお陰で、私たち…
  8. 【写真】2024年4月『みんなとうたコンサート』にて 『南総ラ・ムジカ』は、オペラを愛する市民合唱団。睦沢町中央公民館で…
  9.  動物たちを飼うには、彼らが生涯、安心して暮らせる環境が求められています。捨てられて保健所に捕獲されたり、個人の多頭飼育崩壊などで持ち込まれ…
  10. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】お店の前で。『十五や』のTシャツを着た藤本さん(後列中央)と田頭さん(右隣)  緑豊かな市原市東国吉で、県道21号…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る