名前の由来が乙な可憐な花キッコウハグマ

 落葉前の晩秋に森の中を歩くと、キッコウハグマという小さな菊のような白い花に出会うことがあります。キク科の多年草で、花の直径はおよそ1~2㎝程度。花弁が15あり、それが少し渦巻き状になっています。一つの花のように見えますが、実際は3個の小花の集合体で、それぞれの花に5つの花弁があり、各小花の中心に、オシベとメシベがくっついて一体化になった赤い棒状のものが1つあります。開花しない花も多いというのも特徴で、閉鎖花として花を開かせることなく自家受粉します。長さ1~3㎝の5角形状の葉を地上に輪生状に広げ、そこから10~20㎝、時に30㎝にもなる細い茎を立てて、その周りに花をつけます。
 「キッコウハグマ」という名前の由来は、「キッコウ」と「ハグマ」が合わさったものだそうです。5角形状の葉を「亀の甲羅」に見立てて「亀甲」。「ハグマ」は、白熊と書き、仏具の「払子」に使われる長い獣毛 (馬の尾毛など) や麻を束ねて柄をつけたものと言われています。15の白い花弁が束ねられた様に見えることから払子に見立てたもののようです。仏教では古くから煩悩を払う儀式用具とされ、仏具以外でも兜の飾りや槍の飾りなどにも使われていたようです。時代劇等で、武田信玄の白毛のついた兜や明治維新の官軍の指揮官がかぶっていたものと言えば想像できるのではないでしょうか。昔から人々に愛されてきた花ということが理解できます。
 日本各地に分布するのですが、余り日の差し込まない下草が少ない森を好むようです。他の植物に覆われると生育できないため、竹や笹、葛の広がりで森林が荒れてきた昨今、なかなか見られなくなっています。可憐なかわいらしい花がこれからも咲き続ける森林環境が維持されることを期待したいものです。
(ナチュラリストネット/岡嘉弘)

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】日展 彫刻 2023年  都内六本木の国立新美術館にて、11月1日(金)から24日(日)まで『第11回日展』が開催…
  2.  秋の里山では、山の幸クリの殻斗(いが)の棘が茶色く変わり始め目立つようになる。葉が覆い茂っている林では見分けにくい。花が咲く6月と殻斗が割…
  3. 【写真】初日に行われる華やかな「時代絵巻行列 山鉾・山車の巡行」  10月5日(土)、6日(日)に市原市更級にある上総更級…
  4.  いすみ市大原駅近くにある、工芸品の展示販売を行う古民家ギャラリー『北土舎(ほくとしゃ)』他で、特別展『琉風(りゅうかじ)』が開催される。1…
  5. 【写真】Frederic Edward Weatherly『Peeps into Fairyland(妖精の国を覗き見る)』 …
  6.  市原市アーチェリー協会主催の1日体験教室『60歳からのアーチェリー』が10月16日(水)に開催されます。場所はゼットエー武道場。県内でも数…
  7. 【写真】お店の前で。『十五や』のTシャツを着た藤本さん(後列中央)と田頭さん(右隣)  緑豊かな市原市東国吉で、県道21号…
  8. 【写真】本祭の武者行列で本田忠勝に扮する渡辺正行さん  第50回大多喜お城まつりが10/12(土)・10/13(日)の2日…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】本祭の武者行列で本田忠勝に扮する渡辺正行さん  第50回大多喜お城まつりが10/12(土)・10/13(日)の2日…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る