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ふるさとビジター館
- 2017/10/13
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名前の由来が乙な可憐な花キッコウハグマ
落葉前の晩秋に森の中を歩くと、キッコウハグマという小さな菊のような白い花に出会うことがあります。キク科の多年草で、花の直径はおよそ1~2㎝程度。花弁が15あり、それが少し渦巻き状になっています。一つの花のように見えますが、実際は3個の小花の集合体で、それぞれの花に5つの花弁があり、各小花の中心に、オシベとメシベがくっついて一体化になった赤い棒状のものが1つあります。開花しない花も多いというのも特徴で、閉鎖花として花を開かせることなく自家受粉します。長さ1~3㎝の5角形状の葉を地上に輪生状に広げ、そこから10~20㎝、時に30㎝にもなる細い茎を立てて、その周りに花をつけます。
「キッコウハグマ」という名前の由来は、「キッコウ」と「ハグマ」が合わさったものだそうです。5角形状の葉を「亀の甲羅」に見立てて「亀甲」。「ハグマ」は、白熊と書き、仏具の「払子」に使われる長い獣毛 (馬の尾毛など) や麻を束ねて柄をつけたものと言われています。15の白い花弁が束ねられた様に見えることから払子に見立てたもののようです。仏教では古くから煩悩を払う儀式用具とされ、仏具以外でも兜の飾りや槍の飾りなどにも使われていたようです。時代劇等で、武田信玄の白毛のついた兜や明治維新の官軍の指揮官がかぶっていたものと言えば想像できるのではないでしょうか。昔から人々に愛されてきた花ということが理解できます。
日本各地に分布するのですが、余り日の差し込まない下草が少ない森を好むようです。他の植物に覆われると生育できないため、竹や笹、葛の広がりで森林が荒れてきた昨今、なかなか見られなくなっています。可憐なかわいらしい花がこれからも咲き続ける森林環境が維持されることを期待したいものです。
(ナチュラリストネット/岡嘉弘)