今、全国の畑や田んぼで小さくて大きな革命が始まっています。先日、都内にて「種まいて水やって自然栽培パーティー」というドキュメンタリー映画の上映会に参加しました。障害のある人たちに仕事のできる場を作るため、全国に増え続ける休耕地を借り、自然栽培で農作物を作っていくお話です。

 自然栽培とは、農薬も除草剤も肥料もいっさい使わず、本来自然が持っている力で作物を育てる農業を指します。そんな事を聞くと、果たして作物を作れるのかという疑問を抱くかもしれませんが、もともと地球に生まれてきた命にそれらの物は全く必要ないのです。人間の欲求や事情が重なり、色々と手を加えて農薬、化学薬品、肥料などを加えるようになってしまったのです。

 自然栽培は「育てる」ではなく「育つことをお手伝い」する農業。その土地の気候や風土にあった作物を育て、本来野菜が持っている力を引き出します。自然栽培パーティーは2015年に5つの福祉施設から始まり、今では北海道から沖縄まで125の団体が参加しています。ここでは障害者の方々を「農福師」と呼び、地域の人々や社会とどんどん繋がっていきます。

 映画の中で1人の自然栽培農家が「慣行栽培を止め自然栽培の田んぼを始めたら、ホタルが現れるようになりました。この風景を自分の子どもに見せたかったのかな。ふと紙幣に目をやると、ただの紙切れに見えてしまいました」と言い、ある農福師は「農業は楽しいですか?」と尋ねられ、「すごく楽しい。でも何でだか分からない」と言っていました。誰もが本能的に土に触れる喜び、育てる喜びを感じることができるのでしょう。

 さて、やっと去年の10月から取り組んでいた小屋と温室が完成しました。春の種まきにも何とか間に合いそうです。農福師さんたちにエネルギーを分けてもらい、畑に向かう力が沸いてきました。

 

◇長谷川良二。長柄町在住。ハーブコーディネーター、ガーデニングコーディネーター、歯科医師。市原を中心に公民館でのハーブの指導などをしながら自然栽培で野菜を育て、養鶏、養蜂にもトライ中。

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