日本酒のラベルを集めて50年

日本酒のラベルを集めて50年
展示会で酔ってもらうのが夢
茂原市 齊藤 信二さん

「中学の時に富士山に登ってから山が好きで、仕事先では山岳部に入り南アルプスから近郊の山までよく登りました。マラソンも好きで、青梅マラソンや別府毎日マラソンも走りましたよ。古いもの、城や仏像も好きなんです。30代のころ、本納の文化財顕彰会に入って郷土史の研究もしましたね。人がやらないようなこと、歴史のあるものが好きなんです。でも飽きっぽいので長続きしないんですよ」と笑うのは茂原市南吉田に住む齊藤信二さん(63)だ。そんな飽きっぽいという齊藤さんが、50年近く続けている趣味がひとつある。それは…「高校を卒業して国鉄に就職したころ、周りの友だちがタバコのパッケージやマッチ箱を集めだしたんですね。自分も何かずっと集められるものはないかなと考えたとき、小さいころよく使いにいかされた酒を思い出したんです」。小さいころ齊藤さんは、大網白里町(現大網白里市)に住む母方のおじいさんの家に遊びに行くと、よく酒を買いに行かされたのだそうだ。それを思い出し日本酒のラベル収集を始めた。
 酒好きなら自ら飲んで集めることもできるだろう。齊藤さんも酒は嫌いではなかった。が、未使用のラベルを集めたかった齊藤さんは、まず酒造組合の名鑑を手に入れ、日本全国の酒蔵に返信用の封筒を同封し手紙を出しまくった。「当時は全国に4200の蔵がありました。北は北海道から南は沖縄まで、バラバラに手紙を出していきました。すると、会社から帰ってくると、ポストに各県から続々と届いていて、それが楽しくてどんどん出しましたね。ほとんどの酒蔵が返信してくれました」
 また、ラベルのコレクターが集まった会があることを知り、齊藤さんも会員になって情報交換をしたり、持っていないものを物々交換したりもしたが、「だんだんお金でやり取りするようになって、それは違うと思ってその会はやめました」。その後も手紙による収集は続き、一番多い時で3600枚ほどのラベルを集めたという。
 しかし、齊藤さんは大きなミスをしてしまった。「集めたラベルは写真のアルバムに保存していったのですが、カバーのビニールにラベルが貼りついて剥がせなくなってしまったんです。黄ばんでしまったものもありましたし。で、また送ってもらおうと手紙を出しましたが、もう手に入らないものもかなりあって失敗しました」と残念がる齊藤さんだが、そのアルバムは各県ごとに整理され、コレクション部屋となった応接間の棚の下にきちんと並んでいる。

 そして、そのコレクション部屋で目を引くのがお祝いのときなどに使われる菰樽と壁に飾られた色紙だ。「酒に関係するものを集めるのがモットーなので、酒造メーカーや酒蔵の社長さんに色紙を書いてもらったんです。千葉県内にも40ほどの酒蔵がありますが、そこは自ら訪ねて行きお願いしました」。そんな中でも黄桜酒造の2代目社長が「道」と書いた色紙は、CMでも有名な「酒は黄桜本拍子」の手紙とともに大事にしているそう。菰樽は、「人が集めないものが欲しくなる」と、居酒屋や寿司屋に飾ってあったものを、何度か通って譲ってもらったとか。その数、飾ってないものも合わせ100はあるそうだ。
 通信手段として電話やパソコンが主流の今も、齊藤さんは手紙を送り続けている。「電話じゃダメなんです。字が下手でも、こちらの誠意を文字にして送らないと心が伝わらないでしょ。昔はタオルやのれんなど一緒に送ってくれることもありましたけれど、今は1枚のラベルをもらうのも大変になりました」と苦労もあるが、送られてきたラベルを見れば、そんな苦労も吹き飛ぶ。また、近年は酒蔵を訪ねる旅も、齊藤さんの楽しみに。酒蔵や杜氏さんとの記念写真もコレクションのひとつに加わっている。
 そんな齊藤さんの夢は、これまで集めたラベルや色紙、菰樽を展示してみんなに見てもらうことだという。「今日本酒は、日本で消費されるより、海外でのほうが人気があるんです。日本酒のよさをもう一度見直してもらいたい。ラベル展を開いて、日本酒を愛する皆様に私のラベルで酔ってもらえたらうれしいです」

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