小さな着物が運ぶ幸せ

小さな着物が運ぶ幸せ

 日本の伝統文化を伝える美しい着物。親から子へ子から孫へとさまざまな思いを込め受け継がれてきた。呉服店まるへいの着物を仕立てて35年の和裁士田中和枝さん(いすみ市在住60歳)はミニチュアの着物を作る。
 息抜きのためにとはじめたのは50歳を過ぎてから。いつも目の届くところに置けるインテリア。思い出の品に生まれ変わると好評である。「着物をそのまま小さくしただけ」と簡単そうに話すが、長襦袢も作り、袷の着物や袴のひだ、紐も本物そっくり。柄を合わせ、サイズを縮小するだけなので大きさは自由に変えられる。
 亡くなった母親の袋帯を姉妹で分け合うために2枚のミニ打掛にしてほしい、着る人のいない自分の振袖を小さくしてガラスケースに入いれてほしいなどの注文に応えてきた。田中さんは子どもや孫の成長を祝う節目ごとに手の込んだアレンジを加えたつるし雛などさまざまな和物の飾りも縫う。親戚の結婚式のときには受付に飾れるようにと白無垢の花嫁と羽織はかまの花婿のウサギの人形もプレゼントしたという。
「ほんの趣味ではじめた」というが評判になり、7年前から教室も開いた。アメリカ人医師の通訳だった女性は手作り品を贈りたいと半年かけてミニ着物を作った。オーストラリアにホームステイする孫のため、受け入れ家族へのおみやげを縫った女性もいる。「手縫いの心がこもった贈り物。海外でもとても喜ばれる」と田中さんも嬉しそう。生徒は大多喜、茂原、勝浦など遠方からも集まり、最高齢は83歳。『まちかどつるし雛まつり』を開催する御宿から通う人もいる。着物をかける衣桁やつるし雛の台は「主人が応援して作ってくれる」と少し誇らしげ。田中さんが縮緬で縫った梅の花はご主人が色を塗った梅の枝に付けたそうで、花瓶に飾れると昨年の展示会で人気を呼んだ。
 田中さんは子育て、介護をしていた間も縫い物を続けてきた。若い頃は急ぎの注文の品を一昼夜で縫ったこともあるとか。糸からはじまり染めや織りと多くの人の手を経てできた反物を完成させる大事な仕事。作業場兼教室には2メートル近くある仕立て台が置いてある。分厚い木の表面には無数の傷。生地をいためないように柔らかなイチョウの木を使ってあるからコテの跡がつく。嫁入り道具として持ってきて、大工さんに2回もカンナで削ってもらったという年季入り。縫い方は布をぴんと張るためのくけ台を使わない男仕立てだそうだ。「足はいつもきれいにしてあるのよ」と笑ってあぐらをかいて左足の親指に布をかけ縫う仕草をしてみせた。お呼ばれやお祝い事には必ず和服で出席し、さりげなく着物の良さをアピールすることも忘れない。
「和の飾り物づくりは針と糸を持つ毎日の仕事に潤いと喜びを運んでくれる。私が上手に作るのは当たり前。はじめて着物を縫った生徒が一生懸命作った作品を見てほしい」と今年も展示販売会を開催する。
ミニチュア着物&ちりめん細工作品展 1月21日~1月26日

問合せ アートサロン茶房『けい』
TEL 0475・40・0862

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