古き良き時代の再現と新しい試みでシャッター商店街に活気を
- 2014/5/9
- 外房版
東商連理事長 鈴木 俊宏さん
その昔は賑やかだった東金駅西口商店街だが、東口に大型商業施設ができ、国道126号線が整備されると、人の流れはいつしか東口へと移り、今やシャッター通りと化してしまっている。これまでも、西口商店街を盛り上げようと様々な試みが行われてきたが、決定打となるものは少なかった。
そんな危機的状況の中、2年前、東金商店街連合協同組合(以下東商連)の理事長に就任したのが、明治時代からこの商店街で薬屋を営む『灰吹屋鈴木薬局』の四代目、鈴木俊宏さん(49)だった。「それまでも理事会員でしたけど幽霊会員でした(笑)。山武郡市の薬剤師会の会長もしていますし、他にも重鎮の方々がいらしたので、無理ですってお断りしたんですけれど、新しい風をとか言われて、2年という条件でお引き受けしました」
学生時代はサッカーに夢中。店も商店街も「気にかけたこともなかった」と話す鈴木さん。大学で東京へ出て、卒業後は仕事の関係で山口県へ。約20年前、家業を継ぐため東金へ戻ってきた。「僕が帰ってきたころはまだよかったんですよ。それがどんどん悲惨な状態になっていって」と現状を嘆くが、実は理事長になったからといって、これという秘策があったわけではなかった。「半年ぐらい理事会も開いていませんでしたから。でもさすがに年末になって、歳末セールもやらないのはまずいだろうってあわてて理事会を開いたぐらいです」と笑う鈴木さん。
とはいうものの、「昔のように人が集まればなんとかなるんじゃないかと思っていました」と話す。「人を集めて商店街をアピールして、またお客さんとして来てくれるようなイベントを開けたら」と漠然と考えていたという鈴木さんに、理事のひとりから、今はシャッターを下ろしている多田屋跡を借りられるという話が舞い込んだ。
「多田屋はこの商店街のシンボルというか、本があって、文房具、楽器、おもちゃ、洋服まで売っていて、僕らの小さいころの遊び場でした。そこを使えるということは意義があるんじゃないかと思ったんです。多田屋の横のサントスという喫茶店も、なんの変哲もないナポリタンの味が忘れられなかったりして…。そう思うと、たぶん僕みたいに昔を懐かしがってくれる人がいるんじゃないかと思ったんです」と考えたら、やることは速かった。
「これまでいろんなラッキーが重なった」と鈴木さんは言うが、多田屋を借りられたこと、そして平成25年が徳川家康来訪400周年ということで商工会に企画をプレゼンし助成金が出たことなど、その後も幸運が舞い込み、昨年の桜まつりの期間に、フリーマーケット、ライブパフォーマンス、東商連の宣伝ブースの3つを基本に、昭和レトロをテーマとした『東金横丁』をオープンした。昔の東金を懐かしんでもらいたくて、多田屋の斜め前にあった甘味処『富士屋』の自慢焼き(今川焼)も復活させた。かなりの盛況に秋にはさらにパワーアップ。『秋の東金横丁ワンコインマーケット』と題し、東金の異色キャラ、やっさくんをデザインした500円硬貨を作り、450円で販売。東商連の加盟店で500円として買い物に使ってもらった。ライブも東金のご当地アイドルYASSA Comachi、姉妹フォークデュオありっぱが盛り上げ、それをUstreamで中継するという試みにも挑戦した。
「古き良き東金の面影を再現しながら、新しい試みを続ける商店街」は、昨年末にはライブ『やっさソニック』を開催。ミニFM局『エフエムやっさ』を開局し、ライブ中継も行った。また今年の桜まつりには『大ガラポン大会』を実施。加盟店での500円分の買い物で1枚抽選補助券を配布したところ、ひとりで40回もガラポンをやった人もいたとか。『エフエムやっさ』もフル稼働。城西国際大学の学生がリポーターとなり実況生中継した。
成功の秘訣は「自分たちも楽しむこと」だという。まもなく最初に約束した2年の任期がくるが、「単発でやるのではなく、繰り返しやらないと。多田屋跡へ行けば地域の歴史とかがわかるというような場所を作りたかったのですが、多田屋が取り壊されるという話もあって。でも常時使えるようなフリースペースを作りたいと思っています」。そしてもっと若い人の力が加われば、西口商店街にも活気が戻ってくるとも話す。鈴木さんの挑戦はまだまだ続く。
問合せ 灰吹屋鈴木薬局
TEL 0475・52・3185