編み部はじめました ピュアな子どもの不思議ワールド

手芸作家 きょうへい(飯田恭平)さん

 髑髏のついたニット帽、ゾンビの置物、引きちぎられた耳や目玉のオブジェなど毒々しいモチーフを題材に作品を発表する手芸作家『きょうへい』こと飯田恭平さん(33)。スキンヘッドの風貌は少し強面だが「人見知りするので話すのが苦手」と照れたように言う笑顔は優しい。
 2009年冬、9年間続けた美容師の仕事を辞めた。早朝から深夜まで働く日もあり、職場と家の往復だけ。接客も苦痛。疲れ悩んだ末に結論を出した。辞めて手に入れたのは季節や時間の移ろいを感じる自由な解放感。翌年、タイミングよく山武の森公園で初めて開催された体験型音楽祭『山のおんぶ』に知り合いから誘われた。髪の毛を縮らせて編み込むドレッドロックス専門店を構えようかと考えたこともあったので、開いたのは髪を編むワークショップ。イベントに参加してアート作品販売で生活する人やいくつも副業を持つ人たちと出会い新たな世界が開けた。髪を編めるから編み物もできると気軽に考え、「自分もアーティストになりたい」と道を見つけた。
 2011年、東日本大震災をきっかけに自給自足のような形で一から手作りできるものを制作したいと綿花を栽培した。収穫した綿から糸を紡ぎ、「僕は冷え性なので」靴下をはじめて編んだ。作れば売れると思っていたが、タネの植え付けから収穫、糸作り、デザイン、製作と時間と手間をかけてもそれほど売れない。そこで糸の生産は諦め自分が楽しいと思う物づくりに絞った。
 編んでいる間は無心になれる。仕事だけど遊び。自分で自宅を改造し工房兼ショップ『飯田製作所』をオープンした。「フェイスブックのハンドルネーム『つむいで。。。あんで。。。』というより『作って遊んで』になった」。編み物をしながらイベントの手伝いをし、「いろいろなものを作らないと飽きられる」と学んだ。友人からもらったドラゴンカボチャをくりぬいて作ったサイケデリックな模様の物入れ、ネパールのヘンプ(麻)とオーガニックコットンで編んだトートバッグ、拾ってきた蔓と糸で蜘蛛の巣などアイデアは尽きない。
「ちょっと恥ずかしいけれど、ぬいぐるみも好き。ウルトラマンより怪獣、主人公より脇役に魅力を感じる」。映画監督ティム・バートンが創る世界にあこがれる。自分だったらこういうキャラクターを登場させてみたいとファンタジーの世界に遊ぶ。子どもの頃から工作が好きだった。父方の祖父が竹細工を作るのを真似て竹とんぼをアレンジして作り遊んだ。牛乳パックや段ボールで「大人が見て、なんじゃこりゃというものを作った」という。
 実は東金市立西中学、県立成東高校のころは柔道部だった。「運動は好きじゃなかったけれど、周りからはみ出したくないという思春期の男子の心理。小心者なので」と笑う。「強くなりたかったし」とも。「コアな人じゃないと気にいってくれないかも」と見せたのは目玉の飛び出した手のひら大の人形。腹部には大きな傷跡がある。不気味だがコットンの手触りと毛糸やフエルトの温もりがおかしみを加える。「嫌がる人もいるかもしれないけれど、イベントに出品すると子どもは面白がって触っていく」。小さなマゴッツ(うじ虫)も作り、傷口に乗せてみた。
 現在は編み物のワークショップを開いたり、オーダーメイドのニット帽や靴下を編んだりする毎日。長南町の『カフェリッカフス サーナ』で開催するトネリコ舎が主催する雑貨イベント『Made by hand』や山武市の雑貨店『Zakkaじんわり』などに出品。大網白里市にある天然酵母と国産小麦のパン屋『粉桜』や手作り洋菓子店などからの注文を受け、厨房でかぶるカラフルでオシャレなニット帽も作った。
 飯田さんの自宅には表札も看板もない。「何かありそうな場所で行ってみたらおもしろかったと思ってもらいたいから」。あえて言えばレンガ風の外観と手作りの大きな木製のポストが目印。同じように手芸をする妻とチャイニーズクレステッドドック2匹と暮らす。サンプルと称し自分用の夏物ベストを制作中。ピュアな子どもの心のまま成長した。これから「飯田製作所を誰でも気軽に集まれる場所にして編み部をはじめたい」そうだ。

問合せ 飯田さん
TEL 090・8058・7742

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