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民家再生、民泊で地域活性化を目指す
- 2018/4/27
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保川建設株式会社 代表取締役 保川謙一さん
「弊社は、古民家再生を得意とする建築会社であるため、こだわりを持つお客様が多い。そうした顧客のニーズに応えるには、ただ住むだけの家づくりではなく、そこに住む方の暮らしをもっと面白くできるかをお客様と一緒に考え、家づくりをモノづくりとして、もっと楽しんでもらうことだと考えています。普通、工事が始まると設計変更は難しい場合が多いと思いますが、弊社はできる限り変更に対応させていただきます。そのため打ち合わせのスタートから造り始めるまで2、3年かかることも。一見、非効率と思われるかもしれませんが、それがモノづくりの真髄だと信じています」と快活な口調で話す保川謙一さん(43)は、茂原市にある保川建設株式会社の2代目代表取締役。先代から受け継いだ民家再生に取り組み、2代目として新たに「生まれ育った茂原市が元気になるよう、地域の魅力を発信していきたい」と民泊事業にも挑戦。今年3月まで茂原市商工会議所青年部で平成29年度会長を務め、市のビッグイベント七夕祭りの一部で企画運営に携わり、集客力アップにも奮闘した。
保川さんは茂原農業高校(現・県立樟陽高校)在学中に測量士の資格を取得。「土木科で学んだが家業を継ぐつもりはなかった。高校卒業後、測量会社に就職して9年ほど勤めました。大工だった父が昭和45年に独立して創業した工務店は事業の拡大と共に法人化し、現在の保川建設株式会社があります。もともと父は古い建物が好きで、NPO法人日本民家再生協会の初期メンバーで、元々古い家の改修は行っていましたが、民家再生という言葉を使っての仕事も始めました。私自身もこれは面白そうだと、こういう仕事なら将来性もあると考えました。25歳で結婚し実家に戻る機会が増え、同族会社で皆、高齢化し先細りになるかもしれないと、家業を継ぐことにしました」と当時を振り返る。
それから10年が過ぎ、2014年、大きな転機が訪れた。現・会長である父親の久夫さんから現・社長になった謙一さんへの世代交代が行われたのだ。保川建設第二創業期のスタートである。「父と共に会社を創り上げてきた方々は退職され若い世代が増え、私が代表取締役に就任し、これから大きく変わっていくだろう段階で、弊社としては初めての新卒採用に踏み切りました。父が創り上げてきた職人のこだわりや技術力に今後を担う人財力を加えていきたい」と決意も新たに。
歯科衛生士の奥様、16歳と10歳の娘さんと暮らす保川さん。「今は仕事ばかりで、休みなし」と苦笑する。現在、13名の社員がおり市内3カ所に本社・工場、民家再生工場、資材センターなどの事業所がある。
古民家再生事業について、「始めた当初は会社の売り上げのごく一部だったが、今では大きな割合を占めるようになった」と話す。顧客は地元民と新住民(移住者)と半々。依頼内容も水回りの改修など小さなものから、屋根を茅葺から瓦に変えたり、曳家(家屋移動)、基礎の造り替えなど大掛かりなリノベーションも。その事例は「古民家の一角に、渡英時に通ったイギリスのパブを再現したいという依頼があり都内の有名なイングリッシュパブを見て回り造ったり、庭に使う石をリクエストされ名石を探しに徳島まで出かけたことも。また、日本の業者が扱っていないイギリスでよく見られるオーガニックプールを、イギリスの設計会社とスカイプ(インターネット電話サービス)で打ち合わせして造ったり」と、他でやらないことにも挑戦する。「お客様のご要望に対して、基本的にできないとは言わない。メリットとデメリットを伝えて、それでもやってほしいと言われた場合はアイディアを絞り出す」とのこと。
今後、地方都市は「縮小する」といわれている。人口減少が地域経済の縮小を招き、地域経済の縮小が人口減少を加速させるという負のスパイラルに陥るリスクが高いとされている。こうした状況も踏まえ、保川さんは「建築だけでは、これからは厳しい。生き残るために裾野を広げなくては。お客様の中には自分は新しい家に住んでいるが、実家の古民家を直したいと思うものの、かかる費用に頭を悩ませている方も。そんな方々のためにも古民家をリノベーションし、民泊に活用することで費用の回収ができたら。茂原市は東京駅から特急列車で約1時間。成田空港からも圏央道を使えば約1時間と交通のアクセスもいい。オリンピックでも注目されているので、インバウンド(訪日外国人)も視野に入れ、外国人にも人気のある古民家に民泊してもらうことで地域活性化につなげたい。もちろん日本人観光客が房総の観光地巡りをする拠点となる宿としての利用も期待している」と将来を見据え語った。
問合せ 保川建設株式会社
TEL 0475・23・3688