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ピアノを弾くことは自分を信じる作業
- 2015/3/20
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ジャズピアニスト 中丸円香さん
東金市在住の中丸円香さん(36)は、1歳3カ月を迎えた娘の初音(ねね)ちゃんと一緒に楽しそうに身体を揺らしながら童謡を歌う。部屋に響く童謡は『しゃぼん玉』や『どんぐりころころ』など子どものころに誰でも歌ったであろう曲ばかりだが、どこか一風変わった調子。それもそのはず、童謡ではほとんど耳にすることがないジャズ風にアレンジされているのだ。「娘の1歳を記念して発売したんです」と自身のCDを持ってほほ笑む中丸さんは、ジャズピアニスト。童謡のアレンジだけでなく、作曲も手がける。「一瞬で曲の流れが浮かぶ」という彼女は、生まれ持っての天才肌かと思ったが、決してそうではなかった。
幼少からエレクトーン、11歳からはピアノを習っていた。それまでは習いごとの1つとして弾いていたが、転機が訪れたのは大学生の時。「税理士になろうと大学は経営学部に通っていましたが、進路に悩んだんです。本当にそこを目指すべきなのか。あまりに迷いすぎて自分を見失いかけていたら、友達がアルバイトをしているジャズバーに誘ってくれたんです」。軽い気持ちでピアノを弾いたら、演奏を聴いていた店の人に本気でやらないかと言われた。それが、始まりだった。『3年やってプロになれなかったら辞めよう』という決意を胸に、ピアノ漬けの日々を送るように。「毎晩あちこちのライブハウスでジャズを聴きました。やりたいことが分からず心が荒みかけていた私にとって、生の音は本当に癒されるものでした」と辛い過去を振り返ることができるのも、今はピアノという同志を見つけているからだろう。多くの人との出会いもあり、1年を経て新宿にある老舗バーでの仕事がもらえた。だが満足したのもつかの間、今度は過労でめまいが頻発するようになってしまった。「毎日5時間の練習をして、3時間のライブをこなす。月に25本の仕事をこなし、衣装代や勉強代でお金もなかったんです」という中丸さんのめまいの原因はメニエール病だった。かすかな音でもめまいが出てしまうので、耳栓をしてライブをこなす。それでも観客の前では完全な演奏を目指すことに必死だった。『頑張る』ことは素敵で、大切なこと。しかし、それは時に人が持っている力を奪ってしまうこともある。吐き気やめまいと闘う日々から逃れるように、4年前都内の住居から実家のある千葉県へと戻ってきた。「家族と一緒にいることで自分を取り戻していきました。一番大きな幸せは、娘が生まれてきてくれたことです」と笑顔を見せる中丸さんの腕の中で、初音ちゃんは音の鳴るおもちゃを手放さない。1月に発売されたCD『ジャズ・ミーツ・ベイビー』は赤ちゃんと母親に一緒に聴いてもらいたいと願って作られたものだ。子どもたちにジャズを盛り込んだ曲で楽しんでもらいたいと思うとともに、演奏できる環境への感謝の気持ちが込められている。
現在は、大網白里市や千葉市・成田市のバーに出演する他、ピアノ講師としても活動している中丸さん。自らの性格を、「頑張りすぎるところはありますね。ジャズにはまった直後は、有名な方に自分からオファーしてセッションを実現したりもしました。追求することが大好きなんです」と笑い、最近ハマっているのがヨガだと話す。そして、「子どもと一緒に毎晩8時くらいに寝ちゃうんですが、夜の2時に起きてヨガでリラックスした後、明け方までピアノの練習をしています」と続ける。作曲をすることは『自分と向き合う作業』であり、今後はレッスンの仕事と並行して、自身のオリジナル曲をたくさんの人に聴いてもらいたいと切望する中丸さん。ソロの他に、トリオで組んでいるバンド活動にも熱が入る。ライブ情報は中丸さんのホームページに掲載中。CDはインターネットショップのアマゾンにて購入が可能。
問合せ 中丸さん
TEL 090-6186-2922
http://blog.goo.ne.jp/madokapiano