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心を動かす大切な音楽 楽しさや素晴らしさを伝えたい
- 2015/5/29
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フルート奏者 桑原友美さん
4月4日、東金文化会館で開かれた『東金ゆかりの芸術家たち 絵画展&スプリングコンサート』。出演者7人のなかで最年少だったフルート奏者桑原友美さん(28)は「オーケストラやスタジオミュージシャンとしてプロの世界で長く活躍されている素晴らしい演奏家の方々とご一緒でき、よい刺激を受けました」と振り返った。
「フルート奏者らしくない」とよく言われるそうだ。人を笑わせるのが得意。まじめで、頭が良い印象があるフルート奏者には見えないらしい。3歳からピアノを習い、姉と兄の影響で東金東中学校の吹奏楽部に入り、中学高校とフルートを担当した。「音楽しか勉強してきませんでした」ところころ笑う。中学2年生のとき、部活の顧問の紹介で東京芸術大学の学生にレッスンを受け、フルートの父とも言われるタファネル作『アンダンテパストラールとスケルツェッティーノ』を演奏し、千葉県吹奏楽連盟による個人コンクールで1位になった。中学生にとっては難曲。学校で朝夕の部活をこなしたあと、帰宅してから楽譜が真っ黒になるぐらい猛練習した。「負けたくありませんでした」と話す勝ち気な一面もある。
高校1年生のとき、同コンクールで金賞受賞。2年生でグランプリを受賞。当時の師匠眞鍋朋子氏に勧められ、3年生になって音大受験を決意。浪人中、「難しいけれど、演奏家を養成する学科に挑戦してみたら」と師事していた高久進氏に励まされ受験、その年新設された武蔵野音楽大学音楽部のヴィルトゥオーソ科の一期生になった。「一番つらかったのは大学時代です」。自宅から都内にある大学へは2時間半。始発電車で家を出て終電で帰る毎日。1日4、5時間の練習をこなし、高額な学費を払う両親に申し訳ないとアルバイトもした。「学生時代があったから今も頑張れます」
大学の実技試験では公開で50分間の独奏がある。舞台で「喜んでもらえているか聴衆の反応が気になり周りを見てしまう」のでよく注意された。客席を気にしないように集中したら演奏が格段とよくなったそうだ。「今もコンサートでお辞儀をする前にホール一面を見渡してしまいますけれど」と笑う。
人見知りをせず、明るくサービス精神旺盛。ロビーコンサートで盛り上げようと手拍子を促したら、聴衆と一体になってリズムをとってしまい、演奏に入り忘れたこともあるとか。「演奏を聴いただけで相手の箸の持ち方や部屋のきれいさがわかる」という大学の恩師からは「あなたは話が面白い。音楽の楽しさを人に伝えられる」と褒められた。
現在は演奏活動をしながら、山武市主催の吹奏楽バンド『山武ジュニアウインズ』、山武、長生、東部、君津地域の学校でフルート講師として活躍。自宅教室で個人レッスンも行う。演奏にはその人の性格が出る。生徒が部屋に入ってきたとき、桑原さんは恩師が話していた通りに「心、頭、お腹の準備ができているか観察します」。心にやる気や楽しい気持ちがあるか、頭できちんと物が考えられているか、お腹に軸があるか見るという。教えるときは「今の音に何が足りなかったのか、どうすれば良くなるのかなど質問攻めにして気づかせます」。レッスンでは生徒と同じ目線になり、一緒に考え、その日覚えたことを忘れられないように工夫している。「奏者として、講師として多くの人に音楽の楽しさや奥深い素晴らしさを伝える存在になりたい」
フルートはリードがないエアリード楽器と呼ばれる。音色のバリエーションが多く、やればやるほど惹きつけられるそうだ。「何の取りえもなかった私がフルートに出会ったことで人生が豊かになりました」。楽曲から喜びや悲しみを学んだ。音楽は生きる希望になる。「お店やレストランではBGMが流れ、運動会や卒業式では音楽がその場を盛り上げます。知らない人同士でも会話が弾み、疲れているときに自分の好きな曲を聴くだけで元気になれます。音楽は日常生活のなかで自分の感情を動かしてくれる大切なもの。世界を変えることができる」と話しは止まらない。いつか自分の子どもと演奏会を開くのが夢だそうだ。