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昔ながらの里山で子どもの生きる力を育てる
- 2017/2/3
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いすみ市の里山を舞台に、年間を通して「子ども達と自然と向き合う暮らし」をテーマにした『いすみたんぼのがっこ』を始めて10年になる。主宰するのは吉田滋子さん(68)。吉田さんは八王子市で長く教員をしていたが、自分が食べるものは自分で作りたいと思い、農業ができる土地を探し、築100年の古民家のある4200坪の土地を求め、いすみ市岬町に移り住んだ。ご主人の祐司さんは養護学校を早期退職し、知的障がい者の社会自立を支援するためのNPO法人を八王子市で設立、運営していて、いすみ市と行ったり来たりをしながらたんぼのがっこの活動を行っている。
「たんぼのがっこを始めた動機は、こんなに素晴らしいフィールドがあり、いい風が吹いている所で子ども達に色々な体験をしてもらいたいと思ったからです。小、中学生を対象に5月から11月の毎月、1泊2日の体験型のプログラムで、田植えに始まり、野菜づくり、生き物観察、絵を描いたり、歌ったりします。夏休みは特別に3泊4日で、海で遊んだり、川でカヌー体験もあります」と吉田さん。
年間7回ある活動では、子ども達に自分で作ったものを食べる喜びを感じてもらおうと、家の前に広がる田んぼや畑で収穫した米や野菜を用いた食事作りをする。海でとったカニや小魚が食卓に上ることもある。薪を割り、レンガやブロックなどを用いたかまども子どもが作る。1年間このプログラムに参加した子の多くは、ノコギリや小刀、包丁やマッチの使い方、テントの張り方がうまくなり、かまどでご飯が炊けるようにもなるという。
当然こうした活動を支援する人が必要だが、祐司さんが主宰しているNPO法人のスタッフや、地元のボランティア精神のある若者達が仕事として参加している。中には生き物に詳しかったり、絵やギターが上手い人も参加しているので、それぞれ得意分野で子ども達と楽しんでいる。
プログラムへの参加は原則的に子どもだけで、古民家やテント、裏山に作ったツリーハウスでの寝泊まりになる。このツリーハウスも子ども達が木材をノコギリで切り、ネジ止めして3年かけて作ったもの。3年前から使用できるようになった。 なるべく昔の生活様式を取り入れ、環境にやさしい生活をと、古民家につい最近ソーラーパネル2枚を設置し、照明や扇風機の電気をまかなうようになった。「蓄電量が表示されるようになっているので、電気が少なくなると子ども達が率先して明かりを消すようになりました。食べ物も水も電気もあって当たり前と思いがちですからここでの体験は貴重だと思います」
現在、知り合いの専門家の指導の下、家の裏山から滲み出る水や気脈を活かしたバイオトイレを建設中だ。「大きな木の根の横にトイレを作りますが、木の根が地面の中に空気の流れをつくり、生きた地面になるそうです。そうなるとウンチをしてもすぐに地中のバクテリアがどんどん分解し大地が吸収してくれるので、溜まらないし臭いもないようです」と祐司さん。
毎年4月に参加者を募集する。20名程度の定員だが、最近は東京都や千葉市などから参加する子ども達も増えた。回を重ねるごとに子ども同士が親密になり、夏休みの合宿からルールや流れに添って自主的に行動できるようになるという。
普段の生活は百姓をしていると吉田さん。無農薬、無肥料での米作りだが、収穫量を増やすため改善しなければならない課題は多いと話す。11月の活動が終わるとすぐ次年度のスケジュールを考えるという忙しさだが、子ども達が活動内容を自分たちで決めて行動計画を作り、皆で協力して活動を進めて行くことが今のテーマ。今後は里山、里海を活用した幼児から大人まで参加できるプログラムを組みたいと考えている。
問合せ いすみたんぼのがっこ事務局
TEL 0470・87・3584
tanbonogakko@gmail.com