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瑞沢川に帰ってきてね
- 2017/5/26
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睦沢町を流れる瑞沢川でサケの稚魚の放流が行われた。3月3日、『一宮川にサケの稚魚を放流する会』主催で約2500匹を川に戻したのは睦沢こども園、土睦小学校、睦沢中学校の子どもたちや一般市民。会長の松本敏男さんは「サケで町を盛り上げたい。子どもたちには町の自然環境の良さを実感し、故郷を大切にする心を身につけてほしい」と毎年取り組んできた。今年で7回目。稚魚の群れは瑞沢川と、合流する一宮川を行き来して1カ月ほどして太平洋に出るという。
毎年、受精卵は前述の園と学校、会員や一般市民が育てている。通常、3、4週間で孵る。水温は4~18度、酸素供給と水質管理をし、45センチに育つまでは遮光するという注意が必要で、今年、用意した受精卵5000個のうち57センチに成長し放流できたのは半分だった。
午前10時、一つ川橋付近の瑞沢川の土手にやってきたのは土睦小学校の児童たち。プラスチックカップに入った稚魚を手渡されると、元気に泳ぐ姿を嬉しそうに見ていた。川岸からサケを放すと、勢いよく体をくねらせ流れに消える魚に「がんばってね」、「大きくなってね」と別れを告げた。
土睦小学校では12月から約250個の受精卵の飼育を開始、4年生から6年生までの理科クラブ16人が毎日飼育日誌を付け、大切にしてきた。6年生の部長は「水が濁らないようにエサを少しずつあげるのが難しかった」と飼育の苦労を話したが、サケは3匹を除き、全て立派に成長した。児童たちは「サケが戻ってきたら、元気だったって声をかけたい」と3、4年後、成魚になって戻るのを楽しみにしていた。
サケは数年前から瑞沢川で目撃されている。一昨年、睦沢中学校近くの橋のたもとで産卵現場を確認し、息絶えたオス1匹を捕獲。昨年12月、町役場裏で死んだオスとメス2匹を引き上げ、話題になった。松本さんはその2匹の姿を「睦沢町の園児、小中学生全てに見せることができた」と嬉しそうに語る。現在、横芝光町を流れる栗山川が本州太平洋側の南限とされているが、サケ遡上の証拠を得て「今後毎年サケが戻れば瑞沢川が南限となるかもしれない」と期待している。
元会長の幸治昌秀さん(73)は一宮川で趣味のカヌーを楽しんでいて、以前からサケを目撃し、釣り人の情報も聞いていたという。2011年、水辺の環境を良くしたいと、埼玉県入間川方面から受精卵を譲り受け、放流をはじめたそうだ。翌年以降、一宮町、睦沢町からの協力を得ることができ、会として活動を始めた。「本当に帰ってくるのと聞く子どももいる。厳しい環境の中で親もいないのに大きく育ち戻るサケから、自然や命について深く考えてほしい」と話した。