砂浜が失われていくことの危険を知ってほしい

 今年も海の季節がやってきた。むし暑さを吹き飛ばす爽快感を与えてくれる海だが、千葉県九十九里海岸では約40年前から砂浜の浸食が進んでいることを知っているだろうか。海岸浸食と呼ばれる現象は、主に砂浜海岸において定着する砂が、流出する砂を下回ることで砂浜が後退する。『浸食防止対策事業』として専門家による提案で一宮海岸に10基のコンクリート製の堤防が造られたが、浸食を食い止めることはできなかった。
 さらに堤防の先端に直角となる壁を増設、ヘッドランドと名付けられたそれは大きな危険が潜んでいた。「当初は、砂が海へ流れる防止策として造られた堤防でしたが、実際には堤防があることによって離岸流といって大きな水の流れができ、むしろ多くの砂が流れ出る結果になり浸食は止まりません。離岸流の速さは物凄く、一宮海岸でも多くのサーファーが命を落としています」と話すのは、太東下海岸近辺に住む大橋照雄さん。海に遊びに行く目的のほとんどは水遊びであって、砂浜に注目することは少ないだろう。だが、砂浜の減少によって起こる危険は他人事ではない。「地震で起きる津波は、砂浜があることによって砂に吸収されて威力が弱くなります。テトラポットやわずか数メートルの塀よりも絶大な効果があるんです」と続ける。
 そんな大橋さんは、従兄弟の吉田正さんが行う『砂浜を取り戻す事業』をもっと多くの人に知ってもらいたいと望む。大橋さんと吉田さんは青年時代から一宮の海でサーフィンを楽しんでいるが、かつて太東下海岸に砂浜はほぼなくなってしまった時がある。植林された松は波の力で海に流されることもあり、3mの塀が建設された。そこで吉田さんは約30年前、漁業で廃棄されるロープと漁網を砂浜に置いてみたのだ。数本のロープと漁網は海にむけて三角形を描いていて長さは10mに及ぶが、設置する場所すべて勘だ。だが、海水と砂浜の動きはとても敏感で、たったそれだけの変化で潮の流れが変わる。
 吉田さんが活動を始めてから、太東下海岸には80m以上の砂浜が戻った。「長年続けてきた結果を、このように実証することで認めてもらえると嬉しいですね。砂浜が広がるとさらに沖に向けてロープと網を落としますが、孤独な活動ですし様々な意見もあります。でもサーファーの安全のためにも続けていきたいです」と吉田さんは語る。「海外でも竹を置いて砂浜を取り戻したという活動があります。九十九里海岸の別の場所で堤防を造る計画もあるようですが、壊したものを取り戻すのは大変です。本当に浸食を食い止める行動が堤防を造るということでいいのでしょうか。みなさんにも関心をもってもらいたいです」と最後に大橋さんは強く訴えた。

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