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明治、大正時代の布を美しく現代に蘇らせる 古布を愛してパッチワークキルト
- 2018/1/26
- 外房版, シティライフ掲載記事
「明治、大正の人は物を大切にしました。新潟にある実家の蔵には母が七五三の時に着た大正時代のちりめんの着物も。染めや柄など、先人が残してくれた物はお金に換えられない素晴らしい物。それを蘇らせ今を生きる人に何かを感じてもらい喜んでもらいたいです」
東金市の内藤哲子さん(82)は、自らのパッチワーク作品に囲まれながら、そう語る。大小の見事なタペストリーの中にはボーダーに祖父の布を用いたものも。布選びから接着芯張り、構図を考え繋げるという手間のかかるタペストリーの合間に、小物づくりにも精力的に取り組んできた。
内藤さんが古布パッチワークキルトに魅せられたのは20年以上前。千葉市のパッチワーク教室での「素晴らしい師との出会い」からだ。以来、「やりたかったことに出会えたと生きがいを見つけた思い」で、8年間夢中で学んだ。
「教室では明治・大正・昭和・平成とそれぞれの古布に触れる機会があり、各時代の布の美しさ、奥の深さに感動しました。様々な時代の布を組み合わせ、心を込めた一針一針によって世界にひとつしかない作品を作る喜びは格別なものです」
もともと専業主婦だった内藤さん。子育てが終わったら老人ホームでボランティアをしたいとずっと考えていたという。「手作業をして一日を過ごしたら楽しいだろうし、それにはパッチワークは最適だと思ったんです。でも、施設では針やハサミを使えないんですね。誤算でした」。
代わりに、興味のある方を自宅に招いて、小物づくりの指導を続けてきた。ボロ市等で調達した材料も含め無償。「好きな人が集まって、喜んでいただければそれが幸せ。その時間が一番楽しい」
子どもたち、孫たちが海外に行く際のおみやげにしたり、逆に外国人の客にプレゼントして好評。「だから、小物は失敗作しか残ってないんですよ」と笑う。4~5センチ程の布でも小物はできる。「自分の思い出の布、大切な人の着ていた布を思い出として残すことは素敵。そして、布の温かみは人を癒します」
内藤さんは「手作りや倹約の精神を体現した」パッチワークがこれからも愛されることを願っている。