幼い頃からこの道を迷ったことなんてない

陶芸家 安井 永治 さん

 長生郡白子町で陶芸教室『陶房永治』を営むのは、陶芸家の安井永治さん(39)。2004年に開窯してから14年。毎日行われている教室には40人ほどの生徒が在籍しており、安井さんは自身の作品を制作するにあたっても、彼らから大きな刺激を受けているという。「私が陶芸家になろうと思ったのは小学校4年生の時でした。その頃は船橋市に住んでいたのですが、学校に1人の陶芸家が体験教室のような形で教えに来てくれたんです。作るという楽しさを知った私は、卒業文集にも陶芸家になると書いているんですよ」と、安井さんは回想する。
 中学、高校へ進学しても気持ちは変わらず、さらに背中を後押ししたのは偶然高校にあった焼窯だった。美術教師が趣味で使用していた窯に興味を持って相談したところ、一緒に制作できることに。「ちょうど進路選択にも迷っていた頃で、陶芸家への志を話すと、芸術で食べるのは大変だと言われた」というものの、夢を諦めることはなかった。卒業後は京都にある工芸専門学校へ進学し、「遊びではずっとやっていたものの、初めて基礎から学んだ」のだとか。
 その後、就職先として選んだのは焼き物で有名な愛知県瀬戸市。制作をしながら販売できる会社に2年ほど勤めたが、景気の悪化に伴い、給与の未払い問題も発生したことでやむなく退社を決意。人づてに見つけた再就職先は、京都でも厳しいといわれる窯元だった。
 「弟子入りという感じで3年そこで修業しました。体力と精神ともに厳しかったですが、その技術こそ今の自分に生きています。父が田舎暮らしを求めて白子町に移住したのをきっかけに、私も千葉へ戻りました。関東では益子焼や笠間焼が有名ですが、私は京焼き、清水焼の手法なんです」と安井さんが話す通り、作品は陶器と思えないほど薄く、そして軽い。

なぜ作り続けるか

 制作を始めてから、『楽しいから作る』というスタンスだけは変わらない。それは相手がいても同じこと。教室に通う生徒は30代からいるものの、多くはシニア世代。経験数や陶芸に対する気持ちは人それぞれだが、安井さんはそれでいいという。「現役で働いている方や、他に趣味のある方。教室ではみなさん陶芸だけでなく会話も楽しんでくれています。ただ、気持ちのある方向けに展示会の開催やクラフトフェアに参加をしているんです」
 5月22日から6日間かけて、大網白里市にあるギャラリー古屋敷で開催した『陶房永治 陶芸展』では、自身と生徒の様々な作品が並べられた。皿やカップ、壺や花器、靴やピアノまで。作品の種類だけではなく、色の多さにも驚きだ。安井さんのこだわりは、「一時的に熱中する技法はあるけれど、ある程度見えてくると違う物に挑戦したくなります。作家さんによっては同じ技法や色を突き詰めることが多いんですが、私は他にない物を探したい。たくさんの釉薬や焼き方、土の種類があるのに絞る必要はないかな、と。歳を取った時に、これだという一つがみつかればいいんです」と熱く語る。
 2004年より毎年のように『千葉県美術展覧会』では入選し、他にも全国公募の『陶芸財団展』、『陶芸美術館展覧会』など多くの賞を獲得してきた。だが、応募理由は経歴が欲しいからではない。
 あまり絵付けをすることはなく、30以上の釉薬で色を出す。展示会をする時に見栄えがするために大作を作る。「私は公募展のためだけに作っているのではなく、大きい物ができたから送ってみる、という感じ。確かに評価をいただけるのは嬉しいですが、作風が自分中心なので、満足した出来でも落選することはもちろんあります。そんな時世間とのズレを感じますが、参考になりますね」と、陶芸に対してどこまでも前向きだ。
 今後も教室の運営と展示会の開催など続けていくことが目標だ。「金銭的に苦労した時期もあります。それに体を壊せば終わり。でも、いつだって未来は分からないもの。常に新しいことをやって、普通に生活できて満足です。金持ちになりたい気持ちもありますが。なにより工房に来てくれる方が毎日を楽しく暮らしてくれたら一番嬉しいですね」と、安井さんは最後に茶目っけたっぷりに笑った。陶芸教室の詳細については問合せを。

問合せ 安井さん
TEL 0475・33・3285

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