砂浜にいのちの営み 海を目指す子ガメたち 一宮ウミガメを見守る会【一宮町】

九十九里浜には、絶滅危惧種のアカウミガメが産卵にやって来る。一宮町の海岸では『一宮ウミガメを見守る会』が5月~9月の間、毎朝欠かさず砂浜に残された母ガメの足跡を調査し、上陸・産卵の記録を取る。その後の孵化の様子も、巣から出た子ガメの足跡をもとに調べている。この夏は、上陸が5回、産卵も5回確認された。5つの巣のうち、子ガメの脱出を確認できたものが2つで、できなかったものが3つ。そのうち脱出できた巣とできなかった巣がそれぞれ1つずつ、台風19号の波に流されてしまった。

ウミガメの巣 発掘調査

 10月22日(祝)、残っている3つの巣のうち、子ガメの脱出のなかった2つについて発掘調査が行われた。発掘調査とは1つの巣の中にいくつの卵が産み落とされて、いくつの卵が孵ったか、また孵らなかった卵はどの程度発育していたかを調べるものだ。調査には大人8名、子ども7名に東京海洋大学『うみがめ研究会』の学生5名が加わり、テレビの動物番組の取材班も同行した。
 1つ目の巣は7月10日産卵のもの。『一宮ウミガメを見守る会』会長の渡部明美さんが、記録した位置を丁寧に手で50センチほどの深さまで掘り、白いピンポン玉大の卵を取り出した。形はぐしゃっとつぶれていて、数は32個。一度の平均産卵数の100個前後からすると、非常に少ない。卵を開いてみると、卵黄の黄色が目立ち、発育状態は初期・中期・後期の初期のものだった。「孵化しない理由は無精卵であるか発育不全ですが、胚が確認できたものがあるので、発育不全かと思われます。産卵後10日間の巣の中の温度が24度以下だと、卵が育ちません」と、東京海洋大学3年生の黒木顕大(くろきけんだい)さんが説明した。
2つ目は7月27日産卵の巣で、91個の卵が掘り出された。卵の中を調べると、甲羅が見えるものも。「甲羅が卵黄より大きいので、発育状態は後期です」と、黒木さん。さらに、「生まれる直前に台風15号で水没した可能性が考えられます。台風がなければ、10匹以上孵っていたかもしれません」との説明に、周りからはため息が漏れた。産卵から孵化までの期間は約60日だが、台風15号が房総半島へ襲来した9月8日は、産卵日から数えて43日目だった。
同じ7月27日産卵の巣がもう1つあり、そこでは9月8日より数日に分けて合計で40匹の子ガメの脱出が足跡により確認された。この巣は海面より高い位置にあり、台風15号による水没こそ免れたが、満潮線との距離が近かったため、子ガメの脱出後に流されてしまった。反対に発掘調査をした方の巣は、高さが海面と同じで内部が浸水したが、満潮線からの距離があったために流されることがなかった。2つの巣の明暗を分けた要因を、渡部さんはこう分析した。

厳しい自然の中で

 産卵のために母ガメは砂浜に上がり、巣が波をかぶらないように安全な場所を懸命に探すが、大自然の中では成すすべのない事が起こる。母親と共に参加した姉弟の服部咲夏(はっとりさっか)さん(小6)、春桜(はお)さん(小5)、季蓬里(きおり)さん(小3)は、「同じ命でも生まれてこれたり、生まれてこられなかったりするのは、これが自然なんだなと感じました。改めて自然て厳しいなと思いました」と口をそろえて感想を述べた。尚、別の日に発掘調査を行った8月8日産卵の巣では、143個の卵とそのうち124匹の孵化・脱出が確認されたとのことだ。発掘調査で掘り出した卵は、すべて元の巣へ埋め戻された。
渡部さんは、「ウミガメの海の中の行動は、まだわからないことだらけです。私たちは、ウミガメと接点を持てる一宮の海岸の環境を守り、毎年調査を続けていくことが大切だと思っています」と語った。会では、随時会員を募集中。詳しくは問い合わせを。

問合せ: 一宮ウミガメを見守る会 渡部さん
TEL.090・1807・7139
メール:kameakemi777@yahoo.co.jp

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