50年後の森をめざす 『森と草はらの再生プロジェクト』 環境学習「体験の機会の場」に認定 森の墓苑時【長南町】

 長生郡長南町市野々の丘陵地帯に、公益財団法人日本生態系協会が運営する樹木葬墓地『森の墓苑』がある。苑内では、『森と草はらの再生プロジェクト』として、一般向けに様々な自然体験・環境学習プログラムを提供している。今年4月、『環境教育等促進法』に基づく『体験の機会の場』として千葉県内で初めて認定され、あわせて千葉県の『ちば環境学習応援団』にも登録された。

房総丘陵のふところで


『森の墓苑』は、2016年2月に開苑。バブル時代に土砂が運び出され、山ごと自然がなくなってしまった場所に在来種の樹木や野草を植え、約50年かけて元の自然を取り戻すという理念のもと造られた。将来は墓苑全体が『本物の自然の森に還る』というコンセプトで管理されている。墓苑では定期的に森づくりイベントを開催し、植樹だけでなく、良質な森づくりに欠かせない野草を種から育てている。春にはニリンソウやホタルカズラ、秋にはハギやリンドウ、ツリガネニンジンなどが、毎年のように来苑者の目を楽しませるようになった。苑内の生態系に関しては、大学や県立中央博物館の専門家とも情報交換をはかり、アドバイスを受けている。
 春を迎えた墓苑ではヤマザクラが咲き、地層からしみ出る水が溜まってつくられたビオトープ池には、ヤマアカガエルのオタマジャクシが泳いでいる。「3年間ここの景色を見ていますが、飽きることがありません」と話すのは、現地スタッフの白井孝賢(しらいたかまさ)さん。生まれも育ちも地元長南町で、自然に親しんで育ち、学生時代も環境教育に興味を持っていた。東日本大震災の被災地をボランティアで訪れた際に、自然の恐ろしい側面を目の当たりにする一方、新しい命が芽生え、自然が回復する行程を見たことで、自然に即した生き方がしたいとの想いが確固たるものとなった。その後『森の墓苑』の理念に共感し、2017年よりスタッフの一員となった。

そこかしこににぎやかな命の営み>


 苑内の真っ直ぐ伸びた杉の木には、フクロウ用に取り付けられた大きな巣箱がある。「2年続けて、オシドリのつがいが営巣しました。今年も来てくれるのを心待ちにしています」と、白井さん。巣箱はその他に、20か所ほど取り付けられている。これらは、2019年5月に開催されたプログラム『いろいろな生きもののための「すまい」づくり』で、参加者が組み立てた巣箱を様々な場所にかけたものだ。「とても入居率がいいんです。ヤマガラが出入りして、ヒナを見ることもできました。哺乳類のヒメネズミ用の巣箱もあります」。同プログラムで用意された『昆虫の家』も、墓苑の片隅で昆虫たちのすみかとなっている。主に4種の広葉樹の木材をさまざまな太さの枝や輪切りで組み合わせたもので、ネムノキの輪切りにドリルで穴を開けたものには、アオスジカミキリが産卵に訪れ、ドロバチは巣として利用している。また、つるし鉢という、鉢にワラを詰めて逆さまに吊るしたものでは、テントウムシやカメムシが越冬をした。
 苑では企業の研修も行っている。愛知県の建設会社の社員研修には、2日間のプログラムで、植樹や種子採取といった森づくり活動や外来種の駆除を行い、同じ長南町にある、ゲンジボタルが生息できるよう配慮してつくられた水田などを見学した。
 こうして『森の墓苑』には、森づくりに共感する多くの人が訪れ、多様な生き物が生息できる環境づくりは実を結び始めている。「自然を再生する仕事は、長い時間と努力、専門知識が必要だと実感しています。将来、ここがりっぱな森に育ってくれることを心から願っています」と、白井さんは悠久の時間の流れに思いを馳せる。5月には、管理棟前にウッドデッキの工事も予定。ここには、長年同協会の理事を務め、昨年亡くなった女優の八千草薫さん愛用のベンチが移設されるそうだ。この場所でずっと、森の命の営みを見守っていくことだろう。
『森と草はらの再生プロジェクト』は、研修会や共催イベント、その他持ち込みの企画にも対応する。学生、団体・企業、趣味のサークルなど、1回につき最大50名まで受け入れ可能。興味のある方は問合せを。



問合せ: 森の墓苑
TEL.0120・901・580
http://www.morinoboen.org

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