ひたむきに生きて見つけた

ひたむきに生きて見つけた
女性に捧げる踊り
ベリーダンス講師 串田真弓さん

 華やかでエキゾチックな衣装を身につけ、甘美な動きで舞うベリーダンス。起源について「古代エジプトや中東諸国で生命を育む女性のための祭祀として受け継がれてきたと言われています」と話したのは市原市牛久在住ベリーダンス講師の串田真弓さん(29)。現地では「東方の踊り」、「民族の踊り」などを意味する言葉で表わされるが、ヨーロッパやアメリカに伝わったあと、踊りの特徴から英語でお腹を意味するベリーの名がついたという。素足で砂を踏みしめるようなしなやかなステップが多い砂漠の民の踊り。飛んだり跳ねたりする激しい動作が少ないので年齢を問わずできる。
 白を基調とした門扉に貝殻で装飾した看板がかかる『ベリーダンススタジオリリィ』。串田さんが溌剌とした笑顔で声をかけると、ダンスウエアに着替えた20代から50代の女性がストレッチを始めた。アラビア風の曲に合わせ、ゆったりと肩、胸、腰を回し、手を指先まで柔らかく動かした。円を描くように腰を回すと音をたてたのはコイン風飾りのついたヒップスカーフ。両手首を合わせ花のように回転させる『ロータス』という動きのあと、「感情を吐き出すように」頭上で手を押し広げた。「お腹の筋肉をひとつひとつ上にあげて」と串田さん。難しい振り付けのポイントを丁寧に説明した。
 休憩時間には身につけた衣装や愛用のヘアケア製品を話題に笑い声が響いた。「女らしい体形になりたいとはじめたら、体の軸が安定してゴルフが上達した」、「O脚が目立たなくなった」と健康効果を話す生徒たち。「ディズニーの『アラビアンナイト』に憧れ習いはじめた」という20代女性もいた。
 串田さんのそばにいつもあったのは音楽。子どものころからピアノやドラムを習い、母親がアコースティックギターを弾いて歌ってくれた。県内の高校に入学したあと、学校生活に疑問を感じて相談すると海外留学を勧めてくれたのは母親だった。とりわけ語学が得意だったわけでもないのにいきなりオーストラリアの学校に飛び込むことに。持ち前のチャレンジ精神で「英語を話さないと生きていけない」環境に身を置いて2年間過ごした。だが、留学中、母親に癌が見つかり、亡くなるという出来事が起きた。帰国後はそばにいてあげられなかった後悔と寂しさから何も手に付かず情緒不安定に。アパレル系のアルバイトをしながら「悲しんでいる時間にやりたいことに打ち込んだほうがいい」と音楽にひたすらのめりこんだ。レストランやバーに出演し、R&Bやレゲエのクラブミュージックに自作の詞をつけて歌った。「普通の高校生だった自分が肉親の死と向き合って成長できた」と10代を前向きに振り返る。しかし、歌うことに限界を感じ、あきらめたのは21歳。もともと好奇心旺盛な性格、サーフィン、アクセサリー作りなど興味を持ったことに全て挑戦した。そのなかで「いつも自分の身近にあってずっと続けられる」と感じたのはベリーダンスだったという。「はじめてショーに出たとき人に注目される快感と達成感を味わった」。舞台はレッスンのモチベーションを上げ、出演者同士の結束を強くする魅力があった。
 26歳で結婚、出産。「子どもを産んで親の気持ちがわかるようになったとき、母はいなかった」。生き生きとレッスンをする串田さんの表情から察することはできないが、不眠、息苦しさを覚えるパニック障害を発症したという。なんとか立ち直りたいともがいた末、気持ちが落ち着いたのは妊娠中に控えていたベリーダンスを再開してから。それゆえ元気になると「女性のために何かしたい」という思いが募った。昨年、スポーツ関係の仕事をするご主人の出身地市原市に移り住むことになったのを機に専用スタジオを新築。今は一心に見つけた道を進んでいる。歌の仕事で知り合った人たちからショーの出演を依頼されることもあり「挫折したことは無駄ではなかった」と明るい。最近になって母親がプロのダンサーだったと身内から聞いた。
「生徒に始めて良かった、楽しかったと言ってもらえるのが嬉しい。教えることで教えられている。健康的で魅力あるボディラインになるのがベリーダンス。レッスン中だけでも妻、母、娘という立場を離れ、女性としての自分を取り戻して欲しい。いずれキッズクラス、子ども連れクラスも設ける予定」とのこと。

問合せ 串田さん 
TEL 080(1057)7734

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