房総往来

房総往来 鋸山
山里 吾郎

 異常気象に振り回された今年もようやく晩秋から初冬への色合いを深めてきた。山あいの木々、静けさを取り戻した海原…。彼岸に行けなかった罪滅ぼしではないが、父母の墓参りついでに慣れ親しんだ故郷の海山を訪れた▼鋸山は富津と鋸南の市町境に聳える。標高329メートル。この高さで「そびえる」の表現はもちろん適切ではないだろう。だがその名の通り、東京湾に迫り出した鋸状の鋭い山肌は、聳え立つような鋭さを感じさせる▼「鋸」の景観は江戸から昭和まで長く続いていた石切り場としての名残。切り出された良質な凝灰岩は「房州石」と呼ばれ、加工のしやすさから石塀など建築資材に盛んに使われた。余談ながら、一番上の叔父は鋸山の石切り職人だったが、作業中に誤って転落死している▼その形状から呼ばれるようになった「鋸山」だが、もともとは俗称で正式には「乾坤山」という。頂上近くに建つ「日本寺」に象徴されるように古くから信仰の山としても知られている。訪れた人ならばおそらく記憶に残っていると思う。総高31メートルの日本最大の磨崖仏や百尺観音、千五百羅漢など霊山に佇む多くの石仏は一見の価値がある▼もう一つ。観光名所として推奨するには頂上から見渡す東京湾の眺望だろうが、生まれ育った身からは逆に海岸から望む鋭い山姿が素晴らしいと思う。鋸山が迫り出した海岸線の岩礁地帯は「明鐘岬」と呼ばれ魚介類の宝庫。今では密漁となるが、子どものころ素潜りで獲ったアワビ、サザエはほんとうに美味だった。

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