日本画家、友禅模様師として日本の伝統工芸を引き継ぐ想い

森田 裕八(ゆうは)さん

 市原市在住の森田裕八さん(42)は、現在無所属で活動する伝統工芸の友禅模様師である。また日本画家としても作品を多く手掛けており、彼女の描くサクラは観る者の心をどこかほっとさせる。「物を作る仕事をしたかった私は、文化女子短期大学部生活造形学科を卒業後は研究室で助手のようなことをしていた。3年後の1993年、日本画家と友禅作家である佐藤平八先生に弟子入り。2010年に独立するまで、衣食住を共にしながら修業した」と話す森田さんからは、とても穏やかな雰囲気が伝わってくる。 
 3月21日から4月27日まで市原市皆吉にある『ギャルリー 梦心坊』で開催された個展では、森田さんの手掛けた作品が丁寧に飾られていた。壁に掛けられた日本画は『サクラ』や『コスモス』、『鶴』など花鳥をモチーフにしたものから、『更級日記』というタイトルの書を記す菅原道標女の姿の画までと幅広く『和』を表現している。友禅染である帯や着物も同様だ。
 森田さんは、「短大時代は型染めをしていて、佐藤先生に弟子入りをしたのは人材募集を見かけたという偶然から。でも、先生の描く多彩な作品に感動したし、初めて友禅染をこの目で見て面白さに惹かれた。絵の淵は、色がつかないようにもち米のノリを絞り出して細い線を描き、中を塗る。技術的に難しいけれど自由に描けるので楽しい」と続ける。
 友禅染は日本で古い歴史をもつ模様染めの技法。着物に直接描くため、失敗しなくなるまで描かせてはもらえなかった。弟子として佐藤さんの工房に住み込んでいた当時のことを、「3人ほど先輩がいたが皆女性で優しく居心地はよかった。ただ、仕事では当然ながら段階があって、最初はひたすら道具の洗いものや掃除ばかり。先輩と同じことはやらせてもらえなかった」と振り返るが、約17年の弟子入り生活で着実に力は増していった。
 95年に西新井大師不導明堂にて工房作品会に参加し、98年から2009年までは毎年足立区梅島小学校にて友禅講習会の講師を務めた。また、2000年に宇都宮東武デパートで小品展、2002年に池袋東武デパートにて工房展、2006年に市川にある茶寮ギャラリー島村での二人展などに参加し、作品を生み出し続けてきた。
『ギャルリー梦心坊』では2006年鎌倉での初個展より二度目の開催で、地元への強い想いからの実現だった。「私が土佐日記や枕草子など文学作品を題材にするのは、元々日本文学が好きなのはもちろん。だがそれに加えて、友禅は伝統的な工芸品であるので古来からのものをうまく合わせながら引き継いでいきたいから」と語る森田さん。
 全作品の中でもお気に入りの一作は大きな屏風に描かれた『サクラ』である。「五井駅西口にある賽徳寺の桜をずっと綺麗だと思っていた。構成に5、6年、着手してさらに2年ほどかけて完成した屏風は、角度を変えるとより立体的になり雰囲気も出る。おもしろい」と言い、その期間を思い出すように笑顔を浮かべた。
 そして、女性ならばみな目を引かれるであろうものが、『貝合わせ』だ。貝殻には、『枕草子』で詠まれた歌の四季に合わせた絵が描かれている。「本来の貝合わせは、平安時代の貴族の遊びで神経衰弱のようなもの。貝殻をひっくり返して、同じ絵柄の取得を競い合う。私の作品は2つの貝の絵を変えて絵巻のようにしたい」という。
 作品は日本画が約30点、友禅が8点ほどだが、「先生から一点一点全力で描いたものを発表しなさいと教えを受けている。今の自分の精一杯の作品を制作でき、それが次の作品へ繋がっていけばいいなと思う」と森田さんは続ける。
 今後は、自身で温め書き記している『ネタ帳』の中の作品を形にしていくことが目標。最後に、「独立した時に、先生から『今、やっとスタートラインに立っているんですよ』という言葉をいただいた。一生修業だと思っている。これからは、養老川など綺麗な水をテーマに作品を作ってみたい。花ひとつの対象物だけでなく全体的な雰囲気で季節や時間まで感じ取ってもらえたら幸せ。『日本画』と『友禅』の両方で個性を磨きたい」と強く宣言した。

問合せ ギャルリー梦心坊
TEL 0436・92・1784

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