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命を見つめ風景を描く
- 2015/5/8
- 市原版, シティライフ掲載記事

水彩絵具と鉛筆、A5サイズのスケッチブックを小さなポシェットにいれ、国内外の旅行先をはじめ、市内の名所を描く大石澄恵(すみえい)さん(70)。市原市鶴舞の自宅で「季節の移ろいを肌で感じ、清々しい気持ちになる風景画が好き」と絵を収めたファイルを開いた。
大石さんが水彩画を始めたのは定年退職後。勢いのあるタッチで「画面に奥行を出していく過程が楽しい」。夫婦で出かけたヨーロッパや北海道の景色を思い出の写真のように懐かしそうに眺める。自転車に乗り、「ひたすら走り、なかなか描けなかった」が自宅から仙台、青森へ一日100キロ走る一人旅もした。
31歳のとき、大石さんは事故で右目を失明した。けれども絵も日常生活も「不自由していない」と淡々と話す。63歳のとき、屋根から落ち、一時は医師が足の切断を口にするほどの大けがを負った。67歳のとき、ガンが見つかり、過酷な抗がん剤治療を何度も受けた。どちらも「入院も捨てたものじゃない」とベッドから見える景色を描き続けた。「つらくても負けたくない。頑固ジジイだからね」と笑う。
庭仕事や収納整理術に凝る妻の要望に応じて便利な家具や棚も器用に作る。高滝湖マラソンにも参加した。「内田未来楽校の個展のときに勧められた諏訪神社や米沢の森、小湊鐵道の駅舎シリーズも描いてみたい」。抗がん剤の副作用で体重も増えたが、今、病状は上向き。「満開の桜に命のはかなさを知り、萌え出る新緑に元気をもらっている」という。
問合せ 大石さん
E-mail sfhanm1054@ybb.ne.jp