市原の誇る作家 遠山あきさん 死去

 市原市田淵の自宅で農業をしながら、多くの著作を発表し、地域活動にも熱心に取り組んできた遠山あきさんが、肺炎のため死去した。享年99歳。10月28日の午前4時40分、市内の高齢者施設で、家族に見守られながらの静かな旅立ちだった。葬儀・告別式は11月1日に五井で行われ、参列者たちはそれぞれに遠山さんとの別れを惜しんだ。
 遠山さんは1917年(大正6年)、大多喜町生まれ。千葉県女子師範学校(現千葉大学教育学部)卒、小学校の教員となり、結婚後は千葉市に住むが、戦災のため、ご主人の実家がある市原に移った。地元で教員を続けるが、戦後は退職し農業に専念。忙しい日常に追われながらもやがて文筆活動を始め、67年に農民文学会入会、75年に文学グループ『槇の会』を立ち上げ、年1回『槇』を発行。78年に『雪あかり』で千葉文学賞、80年に『鷺谷』で日本農民文学賞を受賞。NHKラジオドラマでも著作が放送され、全国的に大きな話題を呼んだ。シティライフでは、創刊当時よりインタビューなどに登場、月1回のエッセイも掲載。日々の暮らしから身近なエピソードを細やかに綴り、多くの読者の共感を得て、今年8月まで連載した。自ら掲載作品を選んだ『やまなみ』は3巻まで発行している。
 激動の時代をくぐり抜けながら、子どもたちに温かい眼差しを向け、女性の地位向上や地域活性化、自然の再生、保護司として受刑者たちの更生に関わる活動にも尽力し、94年には藍綬褒章を授章。遠山さんは2011年に発行した『紫陽花寺遺聞』のあとがきで、「私の作品はいい人ばかりが登場する。綺麗ごとになっていると評されます。(中略)人生はたかだか長くて九十年、ならば性善説でいきたいと思いました。すべてのことに明るい夢をかけて生きていったら、人生楽しいものになるじゃないか、ということで、私の作品には善人が幅を利かせているという結果になるのです」と寄せたが、そうした多くの声なき人々に光を当てる作品を書き続け、実行した人生が多くのファンを魅了したのだと思われる。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

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