古都に眠る友  山里 吾郎

 友は鎌倉の地に眠っている。1986年というから29年も前のことか。38歳の若さ、まさに早世だった▼小欄では度々書いたが、学生運動真っ盛りの頃、大学時代を過ごした。一時は民主化闘争に奔走したが、長期のロックアウトで行き場を失うと多くがノンポリへと変身した。友もそんな一人だった▼「墓参りを兼ね久しぶりに会うか」。70歳近くにもなり、懐かしい顔を思い出したのだろう、何人かから声が上がった。2、3人で会うことはあったが、全員集合は友の3回忌以来、27年ぶり。全員の便を考え集結は東京としたが、遠くは北海道、大阪、愛知からも懐かしい顔が並んだ▼宴が大いに盛り上がったのは言うまでもないが、嬉しかったのは友の奥方が駆けつけてくれたことだ。今でも夫の姓を名乗り、子どもたちを育て上げた。「せめて俺たちにできるのは墓参りか」。一泊した有志は翌日、鎌倉へ向かった▼古都の駅からバスで15分、長勝寺は鎌倉市材木座にある。着くと観光バスが数台、平日にもかかわらず境内には多くの参拝客。「もっと静かなたたずまいだった」はずが、30年近い歳月は寺院の印象すらも大きく変えていた▼境内の中央には高村光雲作、房州は鴨川生まれの日蓮上人像。頼朝伝説を持ち出すまでもなく、房総と鎌倉の強い結びつきを改めて知らされた▼遠い記憶を頼りに寺院の高所に眠る友の墓石を確認。『久しぶりに尋ねてきたよ』30年分の思いを込めて手を合わせた。別れ際、「次は33回忌かな。必ずまた来よう」。そんな約束を交わし、2日間にわたる友人らとの再会紀行を終えた。

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ


今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】『音楽堂in市原《私の十八番》ガラコンサート』にて。ヴァィオリン・川井郁子さん、ピアノ・熊本マリさん  市原市市制…
  2. ホソミオツネントンボ(越冬中)  日本では200種ほどのトンボが生息しているとされています。主に、春から秋に観察でき、身近…
  3. 【写真】いちはらフィールドマップ巡り・市原にて  市原市姉崎在住の石黒修一さん(76)は、『地域を知り・守り・愛する』とい…
  4.  近年、湾岸沿いの工場夜景が注目され、ナイトクルーズが運航されるほどになっていますが、多くの石油・化学工場が林立する市原市の五井・姉崎海岸付…
  5. 【写真】ダリア花(茂原市立美術館蔵)  2月14日(水)~3月24日(日)、茂原市立美術館で、千葉県誕生150周年記念事業…
  6.  今回は、自分の好きなベストスリーに入る監督を取り上げます。読者の方々には、作品は知っているけれど、監督には馴染みがない、という方もいらっし…
  7.  今回と次回で、未来の話をしたいと思います。今世紀の中頃までに世界の人口は100億人を超えると言われています。気候変動により農作物の生産がま…
  8. 【写真】人々に語りかける中村医師 写真提供:PMS(平和医療団・日本)  昨年11月25日、ちはら台コミュニティセンター(…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】『音楽堂in市原《私の十八番》ガラコンサート』にて。ヴァィオリン・川井郁子さん、ピアノ・熊本マリさん  市原市市制…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る